『神戸新聞』2009年2月28日付

「医工連携」で産業振興 人材育成に乗り出す大学


医療分野と工業分野の橋渡し役となる人材の育成に、武庫川女子大学(西宮市)など、関西の大学や団体が相次いで乗り出した。医療産業都市構想が進む神戸市では、神戸大学や市が医療機器の開発などを目指す社会人対象の専門コースを開設し、中小企業の事業拡大を支援する。医療分野に工業技術を生かす「医工連携」による高度な人材を輩出することで、医療・バイオ産業を活性化し関西経済を浮揚させる狙いもある。(段 貴則)

武庫川女子大は、関西大学や大阪電気通信大学など四大学と共同で、新しい学際領域「臨床医工学・情報学」の高度な人材を養成する。今春、学部生を対象に共通講座を開講。医療現場や生命科学の研究には、工学や情報学も密接に絡むため、各分野に精通した人材を育てる。将来は、大学院生や社会人も対象に教育を行う。

今回の取り組みには、大阪大学など関西の九つの大学や研究・医療機関とともに昨年結成した「臨床医工情報学コンソーシアム関西」が、研修などに協力する。

関西ではこれまでも、関西学院大学(西宮市)と兵庫医科大学(同)のように、医学部がない関西有力私大「関関同立」が医科大学と個別に提携。医療・バイオ関連産業の集積をにらみ、人材育成を進めてきた。

武庫川女子大の福尾恵介教授は「医療・福祉に携わるのに必要な倫理観や職業観を身につける教育も特色。人材を育てることで関西経済や医療現場の発展に寄与できる」と話す。



医療産業都市構想が進む神戸市では、中小企業の社員らを対象にした人材育成が活発だ。

神戸大学大学院は二〇〇七年度、医療機器の開発を目指す社会人を対象に工学研究科博士課程前期課程に「医工連携コース」を開講。第一期生八人が今月、二年間のコースを終え、論文発表会を開いた。

神戸市産業振興財団は〇八年度、大学院に従業員を派遣する余裕がない中小企業にも配慮した「医工連携人材育成セミナー」を始めた。今月二十五日には第二期のセミナーを開講。先端医療振興財団(神戸市中央区)やシスメックス、神戸製鋼所などから講師を招き、オリジナルテキストで講義を進める。

同財団の永井千秋理事は「機械モノに強い中小企業が多い神戸の産業構造を生かした人材育成が必要」と指摘。「まず最低限必要な知識を学び、医師と共通の話ができるようになれば、医療機器の開発に地元企業が本来持っている技術力を生かせる」と話している。