『読売新聞』2009年2月25日付

女性教員採用の大学支援、理系対象に給与補助…文科省


大学の女性教員比率を引き上げるため、文部科学省は新年度から女性を新規採用した大学に財政的な支援を行う。女性の比率が特に低い理学、工学、農学系を対象に、研究費や、300万円を上限に年間の給与の半分を補助する。公募で5大学程度を選び、それぞれ1億円を補助する計画で、女性増員の起爆剤になるか注目されている。

人件費を優遇する試みは、北海道大が2006年度から独自に実施している。新たに女性を採用した場合、学部や研究所などが全額負担する人件費の4分の1を大学本部が支出する。

女性を多く採用すれば、各学部などは余裕のできた予算でさらに教員を増やしたり、昇任させたりできる。北大は20年までに女性の比率を20%にするという目標を掲げており、このシステムで約40人が採用された。

ただ、ほぼ3年が過ぎて課題も見えてきた。教員数が約270人と、全教員の1割以上を占める工学部のような巨大な組織では、予算全体への波及効果が薄い。女性研究者支援室長の有賀早苗教授は、「教員数の多い理・工・農については、来年度から補助を2分の1に引き上げたい」と話す。

名古屋大も新年度から女性教員が最も増えている部局を一つ選び、1人分の人件費を本部が3年間支出する予定。女性がどんどん増えるようにと、「雪だるまプロジェクト」と名付けた。

同大では05年、教員の公募に際して「業績評価で同等と認められた場合には、女性を積極的に採用する」と公に宣言。女性の応募者が増えた。男女共同参画室長の束村博子准教授は宣言による一定の効果を認めつつも、「自然増だけでは女性は増えていかない。女性を採用する強い動機付けが必要」と指摘する。

女性教員の比率は、国立大学協会が00年6月に「10年までに20%」という数値目標を設定した。しかし、文科省が育児との両立支援などを始めた06年度以降も、微増にとどまっている。

科学技術振興機構の北沢宏一理事長は「環境整備だけでは不十分。逆差別というような反対を抑え、女性を優先採用するなどのルール作りが必要だ」と話している。(滝田恭子)