『中国新聞』2009年2月25日付

3病院へ常勤派遣中止 広島大が来月末


▽小児科医10人辞職

広島大病院(広島市南区)が、三月末までに呉共済病院(呉市)など広島県内の三病院で小児科の常勤医師の派遣を中止することが二十四日、分かった。県内の公立と民間の計三十病院に小児科医師を常勤で派遣してきたが、小児科医十人が大学の医局を辞職するのが要因という。

呉共済病院以外の二病院とは、現在交渉している。非常勤医師の派遣も検討しているが、夜間診療への影響が出そうだ。

広島大病院の小児科医局には約百二十人が所属し、うち約百人が県内の病院に常勤で派遣されている。三月末で職を離れる十人以外にも昨秋から二人が辞め、四月以降も一人が辞職する意向を示す。理由は開業などさまざまだが、多くが「体力的に厳しい」と疲労を訴えているという。

これに対し、四月から医局に入る研修医は七人にとどまる。このため呉共済病院に派遣中で、三月末に辞職する医師一人の補充を断念。小児科の常勤四人制を維持できなくなる。その影響で共済病院は、呉市内の公的三病院で実施する夜間救急輪番制の見直しを関係機関に要請した。

医師不足の背景には二〇〇四年導入の臨床研修制度がある。新人医師が自由に研修先を選べるようになり、都市部の大規模病院に人気が集中。過疎地域に派遣される大学病院は敬遠されている。広島大病院には、全診療科を合わせて、免許取得五年目までの医師が〇三年度は約九百人いたが、本年度は約七百人に減少した。

小児科医局をまとめる小林正夫教授は「医師派遣を大学病院だけで担うのは限界。例年は年度末の辞職は六、七人だが、今春はやや多く見直しは避けられなかった」とする。

一方、小児科と同じく過酷な勤務が問題化している産婦人科は、広島大病院では三月末に六人が辞職し、四人の研修医が入る見込み。二人減の約九十人となるが、県内の三病院で昨年、七人の常勤医師を引き上げており、現在の計十九病院への派遣を継続する。(藤村潤平)