『河北新報』2009年2月16日付

実学の宮城大正念場 4月から独立法人


県立宮城大が新年度、独立採算で運営する独立行政法人に生まれ変わる。県が大学に支出する運営費交付金も段階的に減少。地元産業界への人材供給や大学の社会貢献をいかにアピールして外部資金を獲得するかが、喫緊の課題になっている。

「法人化を機に在り方を大きく変革し、もっと県民の期待に応えられるようにしなければならない」。1月下旬、宮城大の運営を検討する評価委員会で、村井嘉浩知事がハッパをかけた。

評価委員会では、県からの運営費を、2014年度までに計約8000万円削減する計画も示された。県の県立大学室も3月末で廃止される。

開学の精神に「高度な実学による地域貢献」を掲げた宮城大だが、理想と現実の隔たりに関係者の危機感は強い。

05年4月に新設された「食産業学部」。今春の卒業予定者129人の就職内定率(1月現在)は99%だが、県内就職率は23%にとどまった。

評価委員で水産食品加工業「鐘崎」の吉田久剛社長は「卒業生は即戦力として期待しているが、地元業界には宮城大に食産業学部があるという実感が薄い。地元企業と結びつく努力が不十分なのではないか」と指摘する。

食産業学部は、県立農業短大を組織改編で組み入れた経緯もあり、水産系の教員は2人しかいない。馬渡尚憲学長は「新年度から地元の食品加工業会と連携して、教員の充実や就職機会の拡大に努めたい」と話す。

研究活動を通じて地域貢献を担う教員の意識改革も欠かせない。

宮城大の教員が07年度に獲得した寄付金、受託研究費などの外部資金は、1人当たり61万円。全国の公立大教員の平均(143万円)を大きく下回った。

教員によるセクハラや飲酒運転、教授会の内紛など大学のイメージを失墜させるトラブルも相次いでいる。

外部資金の獲得には意欲ある教員の確保が急務と考える宮城大は新年度以降、実績に基づく教員の任期制・年俸制導入を検討する。新規採用も外部評価機関の判断で行う。

地域との連携でも、地元企業の関係者を講師に招く「地域人材育成プログラム」を展開する。専任研究員3人を配した「地域振興事業部」を設置し、自治体や企業との連携、受託研究を拡大する方針だ。

馬渡学長は「地域の産業活性化に貢献すると同時に、大学へのニーズを高める好循環をつくりたい」と意気込んでいる。

[宮城大]1997年4月開学。大和町の大和キャンパスに事業構想、看護の2学部、仙台市の太白キャンパスに食産業学部を設置。教員は136人、大学院生・学生は1864人。