『琉球新報』社説2009年2月20日付

大学院大学 金の卵産むニワトリに


「本当に沖縄の経済発展に役立つのか」「基地絡みの単なるハコモノ振興策」「予算不足で頓挫する」。県内外から、そんな疑念や疑問が絶えないのが、政府が恩納村で建設中の「沖縄科学技術大学院大学(仮称)」だ。当の与党・自民党ですら党内の無駄遣い撲滅プロジェクトチームが「事業コストに対する効果が不明確」とやり玉に挙げる始末だ。

疑念や疑問の源流をたどると、沖縄の米軍基地問題にたどり着く。これは政府の他の沖縄振興策にも共通するが、県民が求める米軍基地の撤去や過重負担の軽減に政府が応じられない代わりに「沖縄振興策」というアメをばらまき続けている。

大学院大学も北部振興策や基地所在市町村への振興策などと同様、普天間飛行場の移設問題などの絡みで出てきた沖縄振興策の一つだ。だが、政府の「沖縄科学技術大学院大学概要」の説明の中に「基地絡み」との話は一切見当たらない。

「概要」の中で、政府は同大学の沖縄設置の目的を「世界の科学技術の発展に寄与」し、「沖縄をアジア・太平洋地域の先端的頭脳集積地域として発展、経済的自立を図る」と強調している。

しかし、「国設民営」される同大学が世界の一流の研究者を集める費用をどう負担し、年間1人2億円とも試算される研究者の膨大な研究費や滞在費、半数以上を占める外国人学生の公募費用や奨学資金をどう捻出(ねんしゅつ)するか、などの肝心な部分の説明はない。

そのあたりがあいまいなままだったことも疑念や疑問を生んできた。そんな中で政府、自民党は19日、「沖縄科学技術大学院大学学園法(仮称)」案を了承した。

法案では運営経費の2分の1以内を国が予算補助し、しかも施行から「10年間」は補助の上限は設けないという。つまり、全額補助だ。

かなり手厚い措置だ。法案は3月3日の閣議決定が想定され、決定されれば同大学はいよいよ開学となる。

同大学を基地絡みの単なる「ハコモノ振興策」に終わらせるか。それとも世界的な科学技術の先端的な頭脳集積拠点として活用・発展させ「金の卵を産むニワトリ」に育てるか。ここまで来たら、地元・沖縄にも覚悟が必要だ。

膨大な予算だ。より効果的に沖縄振興に結実するようにもっと注文を付け、無駄遣いを監視したい。