『毎日新聞』2009年2月3日付

フランス:労組、雇用で対決姿勢 サルコジ氏、内政で難局


【パリ福井聡】フランスでサルコジ大統領による「改革」を巡り社会の対立機運が高まっている。先月、仏全土で100万人以上が参加するデモが起き、雇用や賃金への不安が改めて爆発。労組側は2日、今後の闘争方針を協議し、政府との対決姿勢を強める構えだ。昨年末まで欧州連合(EU)議長国としてグルジアや中東での調停役で活躍した大統領は内政の難題に直面、得点を失いつつある。

大統領は5日夜、国民に向けたテレビ演説で「景気低迷の原因は仏政府の政策でなく国際金融危機にある」として、国民の不安に理解を示し、対決ムードを和らげる予定だ。

しかし、先月29日のデモやストには国民から高い支持が寄せられている。金融危機以来、失業が増え、賃金カットなども行われているためで「政府は銀行や企業に資金支援するのでなく、国民にすべきだ」とするデモの主張が共感を呼んでいる。デモ参加者数は労組側発表で250万人(警察発表108万人)にのぼっており、サルコジ政権発足以来最大規模となった。

大統領による「改革」の一つで、教員数削減などを掲げた教育改革法案は反発を受けて先送りされ、商店の日曜営業法案も保守派などの反対で骨抜き修正された。公共テレビからの広告削減は今年から実施されたが、左派は「大統領に近い民放を利するだけ」と反発を緩めていない。大統領は外交での影響力保持を狙って、ユーロ圏会議開催をうかがったが、「ドイツの『開催は逆効果』の声で実施に至らなかった」(ルモンド紙)とされ、外交での得点稼ぎもままならない。

北部での先月の遊説の際に反政府派のやじに怒り、「警備が不備だった」として地元警察責任者を更迭するなど、大統領のいらだちはおさまっていない。