時事通信配信記事 2009年2月9日付

第3次報告を首相に提出=教育再生懇談会


政府の教育再生懇談会(座長・安西祐一郎慶応義塾塾長)は9日、大学改革などに関する第3次報告を麻生太郎首相に提出した。大学の質向上のため、私学助成や国立大学法人運営費交付金などの公費支援を大幅に拡充し、教育内容や研究水準の向上への取り組みが進んでいる大学には、公費を重点配分して差をつけるよう提言。全大学に義務付けている第三者評価を厳格に実施することも求めた。

3次報告は、「大学が経営安定化のため、学力不問による学生確保を行い、質の低下が指摘されている」と危惧(きぐ)。学生に必要な学力があることを確認するため、高卒者の基礎学力を測る「高大(高校・大学)接続テスト」の導入を求めた。

併せて、授業料における私費負担が大きい現状を問題視。大学への公的支援の大幅強化を求めた上で、納税者の理解を得るため、教育内容や研究水準などの評価結果に応じて公費配分に差をつけるよう提言。「(質向上への)取り組みが不十分な大学には公費は投入しないことも選択肢に含める」とした。学生の経済的負担を軽減するため、返済が前提となっている日本学生支援機構の奨学金に、渡し切りの給付制を導入することなども求めた。

このほか、(1)必要ない限り小中学生に携帯電話を持たせない、(2)教員採用や管理職の人事の透明性の確保など教育委員会改革を行う、などを盛り込んだ。

報告を受けた麻生首相は、今後、公立学校の質の向上策や理数教育の充実、経済格差による教育格差の是正、スポーツ振興などをテーマに審議するよう要請。

懇談会は今月中にもノーベル物理学賞の小林誠・高エネルギー加速器研究機構名誉教授と北京五輪男子四百メートルリレー銅メダリストの朝原宣治氏ら新メンバーを加え、議論を始める。

●教育再生懇3次報告のポイント

【携帯電話】
1、保護者は家庭内で利用ルールを決める
1、小中学校への原則持ち込み禁止など学校での取り扱い方針の明確化
1、通話など機能限定型の携帯電話の普及拡大

【大学改革】
1、高大接続テストを具体的に検討
1、第三者評価の在り方を見直し
1、公的支援を拡充し、配分方法を大胆に見直し
1、給付制奨学金の導入
1、大学院生への有償の研究アシスタント制度を拡充

【教育委員会改革】
1、選考基準の公表や本人への成績開示など、教員採用の透明化
1、教員人事を教員出身者の身内だけで行わないよう、人事担当の教委事務局幹部を民間などから登用
1、教育委員の公募など選任方法の検討