『徳島新聞』2009年1月29日付

鳴教大大学院、25年間欠員続く 定員削減に現実味


現職教員の再教育を主眼とする鳴門教育大の大学院は、一九八四年の開設から二十五年間、定員割れが続いている。全国の都道府県教委から派遣される現職教員の入学人数が自治体の財政悪化で伸びず、全国に教職大学院ができたこともあって、今後も増加は望めそうにない。国立大学法人化の影響で鳴教大の財政状況はますます厳しくなる見通しで、定員削減が現実味を帯び始めた。(社会部・芝原好恵)

鳴教大大学院は、兵庫教育大、上越教育大(新潟)の両大学院とともに現職教員の再教育を担う全国初の機関として設置された。入学定員は百五十人でスタートし、八五年度に二百人、八六年度から三百人に拡大。現職教員二百人、学部新卒者百人の枠を設けた。

甘い試算で設定

現職教員の定員設定に当たっては、文部省(現文部科学省)が全都道府県教委に問い合わせるなどして派遣可能人数を調査。この総数を、鳴教大と上越教育大、兵庫教育大で三等分した。

文部省の試算の甘さや兵庫教育大が地理的に近いこともあって、鳴教大は当初から院生確保に難航。都道府県教委は、大学院への派遣中も教員に給与を支払わなければならないために派遣を渋った。バブル崩壊などによる自治体の財政悪化が追い打ちをかけ、教員派遣は九七年度の百三十人をピークに減少傾向が続いており、二〇〇三年度には百人を切った。

昨年四月には全国十九大学が専門職大学院「教職大学院」を設置。これまで三大学で担ってきた教員の再教育が十九大学で行われるようになり、本年度の鳴教大大学院への教員派遣は過去最低の六十人に落ち込んだ。

確保へ苦心の策

教員派遣の減少に歯止めがかからない中、大学は学部新卒者を獲得して定員を確保しようと懸命だ。臨床心理士養成コースの人気を受け、欠員のあるコースの定員を振り替えたり、大学院で小学校などの教員免許を取得できるコースを設けたりして何とか院生の人数を維持してきた。

現在は私立大と連携し、学部新卒者を大学院に送り込んでもらうことで活路を見いだそうとしている。〇七年度の四国大を皮切りに、本年度は関西国際大(兵庫)、比治山大(広島)、京都産業大と連携協力協定を締結し、入試方法などを検討している。今後も数校と協定を結ぶという。

入試を担当する村田博理事は「私立大にとっても、国立大との提携はイメージアップにつながるなどメリットは大きい。教員志望の卒業生の実践力を養う場にしてほしい」と話す。

鳴教大は予算面でも“逆風”下にある。政府は〇四年の国立大学法人化以来、研究成果に応じて予算を重点配分する流れを強めているからだ。財務省が〇七年に行った試算によると、国が拠出する国立大の運営資金を研究成果などに応じて再配分した場合、研究よりも教員育成を主とする教育大は大幅に予算を削られ、鳴教大は89・6%減という衝撃的な数字がはじき出された。

鳴教大が六月中にまとめる一〇年度から六年間の運営方針では、定員問題に踏み込まざるを得ない状況にある。ただ、いったん定員を削減すると、さらなる予算減、教職員数減につながりかねない。生き残りをかけ、苦しい決断が迫られている。