『神奈川新聞』2009年1月28日付

「極限のものづくり」へ川崎に新拠点/慶大と、早大、東工大、東大の4大学


「拡張ナノ空間」と呼ばれる未開拓領域の理工学研究を推進する慶応大学、早稲田大学、東京工業大学、東京大学の四大学コンソーシアム(共同事業体)は二十七日、川崎市幸区の新川崎地区に世界最先端の研究・技術開発拠点を立地させると発表した。「極限のものづくり」に四大学の研究者が協力して挑み、産学連携を通じて実用化する拠点を目指すことで四大学と川崎市は同日、基本合意を締結した。

事業体の正式名称は「ナノ・マイクロファブリケーションコンソーシアム」。昨年三月に発足し、市は研究拠点誘致を目指していた。この日、阿部孝夫市長のほか、事業体代表の松本洋一郎・東京大学総長特任補佐ら各大学の理工学部長が川崎市役所で会見した。

研究拠点は新川崎地区の「かわさき新産業創造センター(KBIC)」内の二室(約二百八十平方メートル)で、四月入居予定。

当面は数千万円規模の施設整備で数十人の研究者が常に出入りする拠点としてスタート。三年程度をめどに隣接する第三期事業地区(一・八ヘクタール)に、民間企業や国の協力を得ながら数千平方メートル規模のクリーンルームを備えた研究施設つくる方向で準備を進める。

松本代表は新川崎を研究拠点に選んだ理由について、「ナノ(一マイクロメートルの千分の一)とマイクロ(一ミリメートルの千分の一)、ミリの世界をつなぐ新しい工学を切り開きたい。最終的にナノテクノロジーを生かすには実際に生活に使われてこそ意味があるもので、いわば極限のものづくり。川崎は市の熱意もあり、一緒にやれる企業が集積している。強い大学が協力し、世界の大学と戦いたい」と説明。産学連携による最先端研究を目指す意向を明らかにした。

◆拡張ナノ空間 1マイクロメートル以下の微細領域。この空間の現象の理解が進まないことがナノテクノロジーの製品化が進まない一因になっている。研究が進み超微細加工技術が可能になれば、エレクトロニクス分野だけでなく医療、環境、エネルギー分野への応用が期待される。共同事業体では例えば数年で、ごく微量の血液を採取して血液検査までを行う「無痛超高速血液診断装置」を搭載したマイクロチップなどの実用化なども目指す。