『読売新聞』金沢版2009年1月15日付

金大、2地銀と連携進む


金沢大学と地元地銀2行との間で昨年6月に締結された「包括的連携協力協定」の取り組みが広がりを見せている。研究・教育の基盤となる国からの運営費交付金が削減される中、大学、銀行双方とも提携が生み出す効果に期待を寄せている。(藤元陽)

金沢大の中村信一学長と北陸銀行(本店・富山市)の高木繁雄頭取は14日、同大で記者会見し、39歳以下の若手研究者を対象とした助成制度の創設を発表した。協定に基づき、北陸銀が年間500万円の枠内で、分野を問わず基礎・基盤的な研究に対し、1件あたり最大100万円を助成する。

協定は北国銀行(本店・金沢市)とも結んでおり、大学職員が両行の店舗で接客サービスを学んだり、学生に金融の仕事を知ってもらう研修制度を設けたりするなど、金融の現場や知識を活用した交流を展開。産学連携の推進やベンチャー企業の育成など、人材交流を通して教育・研究の活性化と地域社会への貢献を目指している。

連携強化の背景には、国が国立大に配分する運営費交付金の削減がある。2006年の「経済財政改革の基本方針」(骨太の方針)では、07年から5年間にわたり交付金を毎年1%ずつ削減することになり、大学側は、独自に研究費を確保する必要に迫られている。

会見で、中村学長は「国立大学が担う『次世代の人材育成』という使命を実現するため、非常に心強い取り組み」と助成制度の創設を喜び、「留学生獲得に向け、銀行の海外事務所を活用させてもらいたい」と提携強化に期待を寄せた。

一方、銀行側も大学との提携に、「企業の社会貢献」という社会的評価を受ける以上の効果を見いだそうとしている。

北国銀行法人営業課の大江聡課長代理は「協定締結後は、大学の様々な部署の人と会う機会が増えた」と話す。今までの営業では、商談を進めるのは大学の財務担当者が中心。人事、企画、学務など、新たな職員と接する機会が増え、大学側の未知のニーズを発掘できるようになったという。

大江課長代理は、今後の連携の発展を見据え、「地元企業と大学間の仲介役として、共同研究や新しい事業の橋渡しもできるのではないか」と話している。