『毎日新聞』群馬版2009年1月18日付

群馬大:雇用状況深刻化、09年度から入学金・授業料の減免制度を拡大


◇対象外だった20〜30人救済

雇用状況の深刻化を受け群馬大学は17日までに、保護者の解雇などで家計が厳しくなった学生に対する入学金や授業料の減免制度を、09年度から拡充することを決めた。従来の制度では対象外だった学生20〜30人が救済されるとみられる。また、毎日新聞の調べでは、県内の他の公・私立大学にも今後、検討する動きがある。学費の問題で進学をためらっている家庭は、まずは各大学に相談してみてはどうだろうか。【塩崎崇】

群馬大(学部生)の授業料減免制度では、保護者が死亡したり災害に遭った場合は家計困窮だけで審査の対象になる。このほかの場合は成績条件が加わり、生活保護受給世帯や母子家庭は前年度までの修得単位のうち評価B以上が60%以上(新入生は高校2年と3年の平均成績が3・2以上)、それ以外の家計困窮は65%以上(同3・5以上)が、それぞれ条件だった。

しかし、「雇い止め」や「派遣切り」が多発している現状を受け、家計困窮学生の救済策を昨年末から検討した結果、09年度からは雇い主側の都合で失業した場合も、B以上が60%以上で審査の対象になるよう運用を変更することにした。保護者側の理由による失業は今後、検討する。

新たな成績基準をクリアしていれば、家計が厳しい順に減免の対象になる。減免は半期ごとで、半期授業料(26万7900円)の全額または半額が免除される。

また、入学金(28万2000円)の減免も運用を変更する。入学金の減免は成績は無関係だが、保護者が死亡または風水害などで納入が困難な場合しか原則的には認められなかった。09年度からは倒産や解雇などで家計が急変した場合も加えることにした。

入学金や授業料の現行の減免制度について、県内にキャンパスがある他の4年生大学15カ所に聞いたところ、減免制度がある場合は、学業成績と家計状況を総合的に見て決める方法がほとんどだった。また、減免制度はないものの、相当額を奨学金として給付する大学もある。

今後については、現時点で制度や運用の変更を明言している大学はないが「他大学や雇用状況を見て検討する可能性もある」や「奨学金制度を弾力的に運用する方針」などと回答したところも多かった。

減免制度や奨学金給付制度は、経済困窮の理由が起きた時期が「入学の1年前まで」や「入学後」のように限定されるなど、条件は複雑だ。減免を希望する学生や保護者は、所得証明や解雇通知、通帳などの書類をしっかり保存したうえで、大学の説明をよく聞くことが必要となる。

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 ◇授業料減免制度など県内各大学の現状
大学名
群馬 ×
県立女子 × ×
県立県民健康科学 × ×
市立前橋工科 ×
市立高崎経済 ×
高崎健康福祉 × ×
創造学園 × × ×
桐生 × ×
関東学園 ×
共愛学園前橋国際 × ×
高崎商科 × × ×
上武 ×
群馬社会福祉 × × ×
東京福祉 × ×
群馬パース × × ×
東洋 × ×

 ◇表の見方
注1:「入」は入学金の減免、「授」は授業料の減免、「奨」は返済不要の奨学金給付制度

注2:○は減免制度あり。ほとんどは学業成績と家計状況を総合的に勘案して決める。群馬大の△は、保護者が死亡したり被災した場合は成績に関係なく対象となる。倒産や解雇は原則対象外だが、09年度から見直す。上武大の△は、保護者の死亡や後遺障害で家計に困窮している受験生の入試枠で、倒産や解雇は対象外。×は制度なし。

注3:調査対象は学部生のみで学業優秀な特待生枠や社会人枠、留学生は含まない。常設の規定に限っており、上記以外に地震災害など特例的に認める場合もある。