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国立大学法人富山大学監事
山森利平氏への公開質問状

富山大学教職員各位

 国立大学法人富山大学監事の山森利平氏は、12月24日付で、人文、人間発達科学、経済、理の教授会声明についての、各学部長宛の監査実施連絡書を、12月26日付で、声明等のウェブサイト掲載についての、人文、経済、理、医の各学部長宛の監査実施連絡書を提出しました。これらは、声明等の内容にまで立ち入って問題視する異常な内容で、監事の監査権限を濫用した、教授会による自由な見解表明に対する介入であるといわざるをえません。
 より一般化して述べれば、この問題は、@国立大学法人の監事の職務権限とは何なのか(それから逸脱していないかどうか)、A国立大学法人の監事に、大学内での自由な見解表明に介入(言論統制)する権限があるのか、B特定の利害関係を持つ人物に国立大学法人の監事の資格があるのかという、国立大学法人法に基づく監事のあり方そのものに関わる重大な問題を提起しており、単に富山大学だけの問題ではなく、国立大学における「学問の自由」や「大学の自治」に関わる全国問題として、全国の大学関係者ならびに文部科学省や国会等にも問題提起をしていかなければならない問題であると認識しております。
 富山大学教職員組合は、この問題を全学的な議論に付すために、山森監事に公開質問状を提出しましたので、ご検討ください。

富山大学教職員組合
TEL 076−445−6023
E-mail: kumiai@p1.coralnet.or.jp
HP:
http://www1.coralnet.or.jp/kumiai/

2009年1月13日

国立大学法人富山大学
監事 山森利平 殿

                        富山大学教職員組合 
                        委員長  広瀬 信

公開質問状

 12月24日付の、人文、人間発達科学、経済、理の教授会声明についての、各学部長宛の監査実施連絡書と、12月26日付の、声明等のウェブサイト掲載についての、人文、経済、理、医の各学部長宛の監査実施連絡書についての下記の質問に1月20日までにご回答いただきますようお願い申し上げます。

質問1:この2つの監査は、それぞれどのような職務権限に基づくものですか。

質問2:12月24日付監査は、列挙されている「内部統制システム構築に関するチェック項目」の具体的にどの項目に該当する監査ですか。

質問3:数ある教授会議決事項の中で、4学部の教授会声明をあえて監査対象にした理由を説明してください。どのような疑義があるとお考えなのですか。

質問4:教授会声明の議決手続きについて細かく質問されていますが、数ある教授会議決事項の中で、4学部の教授会声明についてのみ議決手続きを問題にされるのはなぜですか。

質問5:「教授会の議論」について、「声明の内容または公表に関して、反対意見を封殺するような環境にはありませんでしたか。」とか、「教授会構成員が職位や賛否にかかわらず自由に意見を言うことはできるのですか。」と質問されていますが、数ある教授会議決事項の中で、4学部教授会声明についてのみこのような質問をされるのはなぜですか。

質問6:「前例について」として、「第3順位であった学長候補適任者が学長候補者に指名されたことは前例がないので認められないとの論調です。前例のないことはあってはならない、あるいは行ってはいけないのですか。学長選考において前例のないことが起こるのはなぜいけないのか、わかりやすくご教示願います。現行の学長選考ルールから見れば想定の範囲内ではありませんか。」と述べ、声明の内容に立ち入って、ご自分の見解と異なることを理由に、声明で示された見解に異論を唱えておられますが、監事にはこのような職務権限があるのですか。これは、監事の監査権限を濫用した、教授会による自由な見解表明に対する介入ではありませんか。

質問7:「大学の自治について」として、ご自分の「大学の自治」についての見解を開陳され、ご自分の見解と異なることを理由に、声明で示された「大学自治」の考え方に異論を唱えておられますが、監事にはこのような職務権限があるのですか。これは、監事の監査権限を濫用した、教授会による自由な見解表明に対する介入ではありませんか。

質問8:「憲法第23条違反との指摘について」として、経済学部教授会の声明が、憲法第23条(学問の自由)(その要請としての大学の自治)に違反するとの見解を表明したことを問題視しておられますが、監事にはこのような職務権限があるのですか。これは、監事の監査権限を濫用した、教授会による自由な見解表明に対する介入ではありませんか。

質問9:「憲法第23条違反との指摘について」の中で、「憲法違反、選考会議決定無効として学外にも声明を公表されたのでありますから、教授会は、今後司法当局に提訴されることになるものと考えられます。」と述べておられますが、「憲法に違反する」という見解を持てば、必ず裁判に訴えなければならないのですか。このように、「憲法違反というなら裁判に訴えろ」と言わんばかりの恫喝を加えることが、監事の正当な職務権限なのですか。さらに申せば、教授会には法人格がなく、裁判の当事者にはなれないことを知った上で、あえてこのような主張をされているのですか。

質問10:このような、声明の内容にまで立ち入った監査を正当化される場合、我々大学研究者の教育(授業)や研究(論文)の内容(見解表明)に対する監査も正当化されるのでしょうか。例えば、我々が、授業や論文で、それぞれの学問的良心に基づいて、「○○は憲法に違反する」という見解を表明した場合、それが監事の見解と異なる場合は、そのようなケースについても監査対象にし、その見解を表明する者に、「裁判に訴える」ことを迫ることができるのですか。

質問11:今回は、数ある教授会議決事項の中で、4学部教授会声明についてのみ監査をされていますが、教授会の他の議決事項、たとえば、教授会でのカリキュラムの決定とか、学生の処分の決定などについても、監事が異論を持てば、単なる見解の違いというだけで、その議決手続き、あるいはその内容にまで立ち入った監査をすることができるのですか。

質問12:「学長選考会議における投票について」では、学長選考会議で、正規の手続きを経て決定された事柄に、当事者の学部長が反対することを問題視しておられますが、これも監事の権限を濫用して、学部長の自由な見解表明に圧力を加えようとする、事実上の恫喝ではありませんか。これが監事の正当な職務権限なのですか。会議で議決されたことに対して、会議に参加した者には、反対意見を表明することが禁止されるのですか。国会で議決された与党案に、野党が事後に反対表明することが禁止されるなどといったことは聞いたことがありませんが、どのようなご見解ですか。合わせてご指摘すると、教授会声明は、学部長個人の見解ではなく、教授会構成員の意思表明であり、学部長に圧力を加えることで、教授会声明を押さえつけようとするやり方は許されないと思いますがいかがですか。

質問13:12月26日付の、声明等のウェブサイト掲載についての監査では、「適切性、正確性の情報公開原則」(ならびに、「人権侵害、団体への誹謗中傷」)の観点で問題視し、より具体的には、「学長選考会議、とりわけ学外委員は意向投票結果を無視した」、「学長選考会議の選考結果は、大学の自治を侵害する、無効である、憲法第23条違反である」という声明等の主張が「事実であることを立証」せよと述べておられますが、声明等が表明しているのは、「学長選考会議の決定」に関わる「事実」に対する「評価」であり、「見解」であるのであって、「事実であることの立証」を迫ることはまったく的外れであると考えますがいかがですか。「事実」を踏まえた「評価」や「見解」の表明にこのような監査をしかけることは、監事の監査権限を濫用した、教授会による自由な見解表明に対する介入ではありませんか。

質問14:大学のウェブサイトには、教員個人のサイトもたくさんあり、それらのサイトで研究成果を公表したり、社会の様々な問題について見解表明を行ったりしている場合もありますが、監事が、それらの個々のサイトで行われている様々な意見表明に対しても監査をしかけ、たとえば、「○○は環境問題の重要性を無視した対応である」とか、「○○は、大学の自治を侵害する」「○○は憲法○条に違反する」などの見解に対して、「事実であることを立証」せよと介入することが正当化されるのですか。
 たとえば、昨年、ノーベル賞受賞に輝いた小林・益川理論は、6つのクォークの存在を予言するものでしたが、実際にその存在が実験によって証明されたのは30年ほど後のことでした。実験で「事実」が証明されるまで、このような見解はウェブサイトで公開してはいけないのですか。

質問15:ウェブサイトに掲載されている「富山大学の理念と目標」の次の一節に示されている現状認識は、「事実であること」が「立証」されたものですか。それとも一つの「見解表明」ですか。監事が、「事実」であるとお考えなら、それを「立証」してください。単なる「見解表明」で、「事実であること」が「立証」されていないので問題だ、ウェブサイトに載せるべきではないとお考えなら、西頭学長に「立証」を求める監査請求をしてください。そのおつもりはお有りですか。できなければ、あなたの主張はダブルスタンダードであること、恣意的であることを自己証明することになりますよ。

 「しかし、20世紀後半に急速に拡大した人類の活動は、自然界の多様性と固有性を損ない、地球上の生態系における「生命(いのち)の循環」を危機に陥れている。また社会のグローバル化に伴う負の側面も様々な形で表面化している。21世紀の今日においては、このような地球規模の問題を解決するために、多様な文化の相互理解の促進と新たな知の創出が求められており、「知の東西融合」は一層重要性を増している。」

質問16:山森監事は、「(株)インテック・アイティ・キャピタル 総務部長」から富山医科薬科大学監事を経て、富山大学監事になられ、現在も「インテックからの出向」身分だとうかがっております。今回、学長選考会議の決定を批判する各学部の声明等を敵視する異常な監査をしかけられたのは、学長選考会議の学外委員で、あなたの事実上の雇用主に当たる、(株)インテック・ホールディングス代表取締役会長の中尾哲雄氏の意を受けてのことですか。それとも、その意を推し量ってのことですか。

質問17:経営協議会委員として富山大学の経営側の立場にある、(株)インテック・ホールディングス代表取締役会長の中尾哲雄氏と利害関係のある山森氏に、第3者的立場からの「公正不偏の態度」が求められる監事の職務は務まるとお考えですか。