『沖縄タイムス』2009年1月14日付

奨学金回収策を強化/日本学生支援機構/「理念を無視」疑問と批判も
滞納者、ブラックリストに/現役生、不同意は打ち切り


日本育英会など五団体が合併した独立行政法人日本学生支援機構は、奨学金滞納者情報を、全国の金融機関でつくる個人信用情報機関に登録する(通称・ブラックリスト)など、回収強化策に乗り出した。延滞や返還中の人に加え、奨学金を利用する現役大学生にも、滞納時の情報機関登録に同意するよう通知。「同意しなければ奨学金を打ち切る」としている。関係者には「返したくても返せない人も多く、制度の趣旨を逸脱している」と強硬回収を疑問視する見方も強く、波紋を広げそうだ。(嘉数浩二)

同機構の奨学金は全国で百三万人(二〇〇七年度)、県内でも相当数が利用。信用情報機関は全国千四百の金融機関が会員で融資などの判断基準にもなるため、登録されればローンやクレジットカード利用が困難になることも想定される。

同機構は昨年十二月、三カ月以上の延滞者を登録すると発表。請求書に同意書を同封したほか、各校を通し学生にも通知を始めた。沖縄タイムスの取材に「今春卒業生を除いて、現役学生で奨学金を受け取っていても、同意しなければ打ち切りになる」とした。

ほかにも延滞者の借用情報を入手し、多重債務とみられる場合は即時に差し押さえなど法的手段に入ると言明。〇五年度から始めた回収業務の民間委託は年々増え、昨年度は八千二百三十一件に。同機構は〇七年度の返還率が八割を切り六百六十億円が未返還とし、「安定運営のため回収強化が必要」としている。

一方、奨学金問題などに取り組む沖縄なかまユニオン(比嘉勝子代表)の十二日の学習会では、実際に通知が来た当事者から「四年で利子を含め約四百万円借りた。雇用環境の厳しい県内で、延滞する若者が続出する」「突然、委託を受けた民間業者から一括払い請求書が来た。分割で返したいが、電話しても機械応対で事情が説明できない」など不安が相次いだ。

同ユニオンの西岡信之さん(大学非常勤講師)は「教育の機会均等を保障する憲法や教育基本法の理念を無視した手法で、教育の金融ビジネス化だ。進学をあきらめる学生が増え、制度は崩壊する」と批判した。

強硬取り立てに反対する同機構労働組合(学支労)は、現役学生への同意書について、弁護士から「採用(契約)時になかった条件を加え、同意を強制するやり方は違法性が高い」との指摘を受けたという。

同ユニオンは二月中旬、関係団体とともに同機構や国に要請行動を行う。加入・問い合わせは比嘉、電話090(9783)9866。