『中日新聞』2009年1月4日付

名大に複合材研究拠点 大学院に来月新設


東海地方に集積するモノづくり産業の技術基盤を強化しようと、名古屋大大学院は2月、工学研究科内(名古屋市千種区)に複合材工学研究センターを新設する。三菱重工業が開発する国産旅客機「MRJ」で、主翼と尾翼に使われる炭素繊維強化プラスチックの研究から手掛け、複合材の世界的な研究拠点を目指す。

MRJは「YS11」に次ぐ約40年ぶりの国産旅客機。愛知県営名古屋空港(豊山町)を舞台に、産・官・学連携による国家プロジェクトとして推進されている。大学の複合材研究施設は全国的に珍しく、名空港隣接地に飛行研究施設をつくる宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)とともに「学」の一翼を担う。

炭素繊維強化プラスチックは軽量にもかかわらず硬度が高いのが特徴。自動車や飛行機向けの次世代素材として注目されている。名大工学研究科は「東海地方が世界に誇るモノづくりの拠点であり続けるため、複合材の研究が不可欠」と判断し、センター設置に踏み切る。

スタッフは航空宇宙工学を中心に、マテリアル理工学や分子化学工学、電子情報システムの研究者11人。宇宙機構の委託を受け、2月から炭素繊維強化プラスチックの基礎試験を始める。新年度以降は三菱重工との共同研究を本格的に進め、2011年秋に予定されるMRJの初飛行までに成果を出したい考えだ。

初代センター長に就任する上田哲彦教授(航空宇宙工学)は「航空宇宙産業を次世代の基幹産業とするため、全力を尽くす。その後、自動車や他の分野にも研究対象を広げ、東海地方の製造業を側面的に支援していく」と意気込んでいる。

【複合材】 使用目的に合わせ、強度や耐熱、軽量などの付加価値を付けるため2つ以上の素材を一体的に組み合わせた材料。近年、注目を集める炭素繊維強化プラスチックは、年内にも就航が予定されている米ボーイング社の次世代中型旅客機「ボーイング787」で、主要構造の約50%に用いられている。