『毎日新聞』2008年12月26日付

利益相反:大学医学部「指針」33% 文科省、研究の信頼性確保促す


公正な臨床研究を進めるため、利益相反に関する指針を整備した医学部のある大学は約3割にとどまることが文部科学省の調査で分かった。また企業から使途を定めず支給される「奨学寄付金」を申告対象にするとした大学は67%だった。文科省は患者の安全確保や研究の信頼性を損ねないよう、大学に指針作りを促した。

利益相反は、大学の医師や研究者が企業から研究費や報酬などを受けている状態。調査は11月、医学部のある国公私立の79大学を対象に実施し全大学が回答した。

その結果、利益相反のための指針を持っていたのは33%、08年度中に策定予定と答えたのが37%、今後策定または未定が30%だった。国立大(42大学)は53%が策定済みだが、私立大(29大学)は14%、公立大(8大学)は皆無だった。

利益相反の申告対象者に、研究を支援する分担研究者を含めたのは56%、研究者の家族は48%にとどまった。研究仲間や家族を隠れみのにすることも指摘されており、対象範囲が広い方がより公正さが担保される。

厚生労働省は、研究者の利益相反を審査する委員会が学内に未設置の場合、10年度以降、所属する研究者からの同省研究費への申請を受け付けないことを決めている。

調査をまとめた曽根三郎・徳島大教授は「利益相反自体が悪いのではなく、説明不足で弊害や研究への不信が起きることが問題。指針を作ってほしい」と話す。【永山悦子】

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■ことば

◇利益相反
大学の教職員らが共同研究など産学連携活動に伴って企業や個人から利益(兼業報酬、未公開株式など)を受けることで教育・研究という大学での責任の公正さが疑われる状態。必ずしも法令違反になるわけではないが、社会から不信を持たれる可能性がある。