『朝日新聞』2008年12月8日付

大学の火山観測、富士山・桜島など16は強化 8つ撤退


文部科学省は大学が観測している全国の33火山のうち、活動が盛んな16火山で観測研究を強化する一方、8火山で観測から撤退する体制見直し案をまとめた。大学の火山観測研究は、予算と人材の不足で観測網の維持が難しくなっており、思い切った「選択と集中」を図る。

見直し案では、活動が盛んな桜島、有珠山、三宅島などや、潜在的な爆発力が大きい富士山など計16火山を研究価値が高い火山と位置づけ、5年程度かけて地震計や傾斜計などの観測機器を増やす。

一方、それら以外で気象庁が重複観測している8火山からは順次撤退する。残りの9火山は当面観測を維持する。近く科学技術・学術審議会の火山部会に見直し案を示す。

大学は噴火予知やメカニズムなどの研究に集中し、活動監視や警報発令を担う気象庁との役割分担もはっきりさせる。大学と気象庁の観測データの共有化も進める方針だ。

火山を観測しているのは全国で10大学、研究者は計40人程度。現在の観測体制を維持するには人材不足のうえ、国立大法人化で観測費用も確保しづらくなり、抜本的見直しが避けられなくなっていた。

日本は世界有数の火山国で、活火山は北方領土、海底火山、無人島を含めて108ある。気象庁はそのうちの34火山を連続監視している。(安田朋起)