『琉球新報』社説 2008年12月1日付

無駄遣い論議 沖縄が標的なら筋違い


政府の歳出削減策を検討する自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」で、沖縄政策の見直しが俎上(そじょう)に載せられている。沖縄科学技術大学院大学(仮称)不要論や、「沖縄の産業振興は国が行うべきではない」などの指摘も出ているというから、穏やかではない。メンバーが沖縄問題の経緯をよく承知せず、短絡的、感情的に沖縄を「標的」とするなら筋違いであり、論議の在り方こそ見直すべきだ。

霞が関で官僚からメタボならぬ「ムダボ検診」などと揶揄(やゆ)される同チームは、福田政権時に設置された。道路特定財源で職員用のマッサージチェアやカラオケセットを買ったり、職員が深夜帰宅時にタクシー運転手から現金やビール提供を受けていた実態が相次いで発覚。税金の使途に責任を持つ与党として対応を迫られていた。

厳しく精査しないことには「国民の信頼」は取り戻せない。論議の結果、競争性のない随意契約を2008年度中に原則廃止し競争入札に移行することや、国家公務員のレクリエーション費の凍結・廃止などを柱とした政府支出削減案が打ち出された。

省庁側の抵抗を排しつつ、歳出削減策をまとめた意味は大きい。問題は、その後の沖縄政策に関する論議である。無駄撲滅に異論はないし、沖縄政策といえども聖域扱いをすべきではないだろう。

ただ、政府の沖縄予算には歴史的経緯と特殊事情がある。何のために沖縄担当相を置き、歴代政権が沖縄問題を最重要課題の一つとしてきたのか。経緯や背景をよく知らず、一律にやり玉に挙げているとしたら、あまりに悲しい。

確かに、科学技術系で世界トップ級を目指す大学院大学の設立には大きな予算が必要だ。精査して確固たる計画にしていく姿勢が求められる。

しかし、いきなりの不要論は困る。それを言えば、住民を苦しめる米軍基地こそ不要である。本質論を抜きに「沖縄を甘やかすな」的な意見は控えてほしいし、無駄遣い論議の場にふさわしくない。