『琉球新報』2008年11月30日付

県と内閣府 再燃を警戒 自民PT「大学院大不要論」


自民党政務調査会の無駄遣い撲滅プロジェクトチーム(PT・園田博之座長)が28日、党内で開いた会合で、沖縄科学技術大学院大学や沖縄振興開発金融公庫のあり方を見直す内容を盛り込んだ対策案を提示した。沖縄振興委員会は27日、急きょ会合を開き、内容の撤回を求める決議を採択。PTの会合でも批判が集中したため、取りまとめにはさらに党内各部や省庁との調整が必要として案の決定は先送りされた。県や内閣府関係者はPTの動向に注視しながら「今後も同様な指摘が上がらないとは限らない」と警戒を強めている。

沖縄の政策に関する提言をまとめたのはPTの内閣府担当班(主査・河野太郎衆院議員)。最終的に対策案に盛り込まれた内容は、大学院大学については達成目標の明確化を求めるなど「トーンダウン」(内閣府)した。

しかし、21日、内閣府が班から示された素案では「目標を明確にできなければ大学院大学は不要」「沖縄の産業振興は国が行うべきではない」などさらに厳しい指摘もあった。沖縄公庫に関しては素案通り、日本政策金融公庫との2012年以降の統合が盛り込まれたままだ。

情報を受けた県や内閣府は早速、対応を協議し沖振委を開催。県選出・出身国会議員もPTの動きをけん制するため党有力者に働き掛けるなど、水面下で対応に追われた。

PTの結成動機は近年問題になっていたタクシー代やレクリエーション経費などの無駄削減。沖縄の振興政策がやり玉に挙がったことに、ある国会議員は「沖縄振興に予算がつぎ込まれる一方、基地問題が進展していないことへの不満は聞こえていた。それが表面化したのでは」と推測。ある政府関係者は「PTの議論は突然再燃した。衆議院議員選挙に向けた民主党対策の側面もあるのでは」とみる。

PTの提言には強制力はない。佐藤勉沖縄担当相も28日の閣議後会見で「私が全面的に受け入れるとかいう話ではない」と受け流す意向だ。

だが、ある国会議員は「最初でたたいておかないと、どう飛び火するか分からない。今後も警戒する必要がある」と警戒する。

一方、有力国会議員からは「県や内閣府にも緩みがあるのではないか。このような暴論が出ないよう沖縄政策の妥当性を積極的にアピールすべきだ」との声もある。(宮城久緒)