『神戸新聞』2008年11月26日付

神大発、広がる産学連携 研究や技術・経営相談


神戸大学の産学連携の実務を受け持つ神戸大学支援合同会社(神大LLC、神戸市灘区)が、実績を上げている。活動を本格化させた今年、共同研究や技術・経営相談のために企業と結んだ契約は十件近くにのぼる。山本啓輔代表社員は「来年には、契約の中から複数の成功例が出てくる」と自信をみせる。(段 貴則)


国立大学法人で初の産学連携推進を目的とするLLCとして、二〇〇七年設立。大学内の連携創造本部が戦略・企画立案に特化し、同LLCは技術移転や特許・契約管理など実務を受け持つ。今年四月には、大学研究者の発明や新技術を特許化し、企業に供与するTLO(技術移転機関)としての承認も国から得た。

最大の特徴は「従来の共同研究と違い、結論をはっきり出す仕組み」と、松下電器産業(現パナソニック)の映像技術研究所長を務めた山本代表社員。企業OBが、定期的に大学と企業を訪れ、課題の発見、解決など共同研究などの推進に責任を持つ仕組みで、山本代表社員は「新産学連携」と銘打っている。

地元企業との連携も始まっている。兵庫信用金庫(姫路市)を通じ、産業廃棄物の中間処理を手掛ける西播グループ(姫路市)と契約。埋め立て以外に処理法がない焼却灰を再資源化する共同研究が始まった。

山本代表社員は「大学の知恵を民間に移すモデルとして全国に通じるものにしたい」と話している。

合同会社 2006年施行の会社法に盛り込まれた企業形態。出資比率で利益配分や経営への関与が決まる株式会社と異なり、出資額は低くても技術や知識で貢献した人に配当額を増やす-など、運営の自由度が高くなる。