『毎日新聞』島根版2008年11月24日付

支局長からの手紙:島根大学の経済効果


今回は少し硬めの話です。できる限りかみくだいてみます。

島根大学が地域への経済効果をはじき出しました。経済効果は年間404億円。直接の効果は277億円ですが、この277億円が波及することでさらに127億円を生み出し、計404億円となります。

404億円といってもピンときません。いろいろな数字と比べてみます。今年度の浜田市の一般会計当初予算が321億円。はるかに上回る金額です。世界に目を向けると、南太平洋に浮かぶバヌアツ、サモア、ソロモン諸島といった国のGDP(国内総生産)に匹敵します。

もっと身近なものに換算すると、即席ラーメンが2億7000万袋も買え、カレーライスを6060万皿食べることができます。1万円札で積み重ねると約400メートルになり、重さは約4トン……。この辺りにしておきましょう。

大学のどこから生み出されるのでしょうか。6000人以上の学生と教職員が生活し消費することで205億円▽学生が学んだり研究することで97億円▽いろいろな施設やイベントを通じての外部からの来訪者の消費で87億円▽広いキャンパスや多数の施設の維持管理に15億円。6000人の学生の生活や研究を通じての消費がもたらす波及効果は想像以上です。阪神タイガースが優勝すれば800億円以上の経済効果があるとか、NHKの朝ドラ「だんだん」の経済効果が99億円といわれています。しかし、島根大学の場合はその年限りというのではなく、毎年、安定して生み出し続けていくわけですから“質”が異なります。

これだけ経済効果を生み出す大学を、私たちはどのくらい活用しているでしょうか。身近なものとしては、公開講座やオープンキャンパスなどがあります。地域を研究する学生と協力して街づくりを試みることもできるでしょう。農業をはじめ地場産業の研究課題を二人三脚で進めることも可能です。私が知る限りでは、まだまだ活用する余地は大きいように思います。

地方の国立大学を巡る環境は厳しくなるばかりです。財務省は経費削減を迫り、文科省は地方大学の整理さえほのめかしているそうです。404億円以上の経済効果を発掘するのも、経済効果以外の島根らしい価値を生み出すのも大学を取り巻く市民次第。一度、気軽に足を向けてみませんか。【松江支局長・松本泉】