『科学』2008年11月7日号

来年度の科技関係予算、総合科学技術会議が優先度判定


総合科学技術会議は10月31日、首相官邸で本会議を開き、来年度科学技術関係予算についての優先度判定等を決定した。新規施策のSABC評価では、S評価は1件のみで、経済産業省の革新型蓄電池先端科学基礎研究事業(30億円)が選ばれた。また継続施策200件のうち「加速」となったのは、組織的な大学院教育改革推進プログラムなど12件。重点化が進んでいるという評価もあろうが、評価基準の曖昧さや財政の厳しさから“しかたなく”結果を出しているという印象はぬぐえない。

優先度判定等を行ったのは、科学技術関係の来年度概算要求4兆858億円のうち政策的経費1兆5496億円分。そのうち新規施策(760億円)はSABC評価、継続施策(6876億円)には改善・見直し指摘で加速・着実・減速という3段階評価を行った。また、科研費や私学助成、国家基幹技術など(7404億円)については総括的見解付けを行い、その他の大規模新規研究開発1件40億円、社会還元加速プロジェクト37件239億円、健康研究5件177億円については重点的に取り組むこととなっている。

新規施策のSABC評価では、Sが1件、A34件、B43件、C7件という結果になった。また継続施策(200件、6876億円)については、加速12件、着実・効率的に実施186件、減速2件というかたちになった。

評価結果から見えてくるのは、国家基幹技術などの大規模プロジェクトが予算を圧迫することで、結果的には新規施策の絞り込みが進んだということだ。また分野によっては、A評価とB評価の指摘事項が同じような場合、戦略重点科学技術、最重要政策課題、競争的資金への関わりの度合いが強い方がA評価になり、関わりの度合いが低い方がB評価となっている。さらに産学連携や地域関連施策などでは、研究としの評価軸だけで、実態的な状況を考慮していない評価も見受けられた。こうした判断方法が正しいかどうかは、意見が分かれるところであろう。

今回新たに「健康研究分野」が設けられ、府省の枠を超えた一体的な取り組みについて健康研究推進会議で概算要求方針を決定しており、今回の評価でも5件177億円については優先順位判定は行われていない。この健康研究分野では、基礎研究の成果を活用して、新しい治療法や医薬品・健康機器を開発するのが目的だ。しかし、その担い手となる大学病院は疲弊しており、医療崩壊の危機に陥っている。そのため、診療報酬の見直しや医療制度改革などの根本的な問題を解決しなければ、いくら予算を付けても効果的な研究が展開できるとは思えないが、そうしたことについては府省の枠を超えられていないのか、十分な指摘はなされていない。

継続施策については、「着実・効率的に推進」が186件と93%が3段階評価の中間に評価された。しかし一つ一つの指摘内容を見てみると、玉石混淆であり、これらを一律の評価とすることの意味がどの程度あるのかは疑問が残る。