『しんぶん赤旗』2008年11月17日付

“ワーキングプア博士”解消を
小柴氏が記念講演
東京でシンポ


博士になっても不安定な研究職にしかつけないポスドク問題など“高学歴ワーキングプア”を解消しよう―。東京大学で十六日、シンポジウムが開かれました。大学・研究機関の研究者ら二百人以上が参加し、活発に討論しました。主催は労働団体、教職員組合、科学者らで構成する実行委員会。

二〇〇二年のノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊・東京大学特別栄誉教授(平成基礎科学財団理事長)が記念講演しました。小柴氏は、素粒子ニュートリノ研究の発展にふれながら、基礎研究の大切さを強調。「自然を理解したら、その先にまた謎がある」として、今後の科学を担う若い研究者を激励。そのためには「基礎研究を国が本気になって応援することを願いたい」と述べました。

二年間のポスドク経験後、国立大学で四年間の任期付きの助教になった男性(30)は、数年ごとに職を失う状況では「将来設計ができず、成果の出にくい研究に手を出しにくい」と述べました。

茨城県つくば地区のポスドク経験者(36)はアンケート結果をもとに報告。「ポスドクは、研究所の人材育成に位置づけられておらず、使い捨てだ」と述べるとともに、「弱い立場にあり、パワーハラスメントや時間外労働の当然視など問題が深刻化しやすい」と訴えました。


ポスドク(ポストドクター=博士研究員) 大学院の博士課程を修了した後、大学や研究機関で、短期の任期付きで研究奨励金や給与などを受けて研究する人。ポスドクの形態は多様で、研究環境、給与、社会保険などの条件はまったく異なります。研究以外の仕事で生活を支えながら研究を続ける「支援なしポスドク」もいます。