『朝日新聞』2008年11月14日付

国立大の9割「法人化以降に格差拡大」 学長アンケート


全国の国立大学長に朝日新聞がアンケートしたところ、9割以上が04年度の法人化以降、大学間の格差が「広がった」と感じていることが分かった。東京大、京都大などの有力大とそれ以外の大学の間で、特に財政面の格差拡大を指摘する意見が多かった。国から配分される運営費交付金の削減が、教育内容にも影響するようになっているという。 アンケートは、全国の86大学に送り、84大学から回答があった。

法人化は、国立大を国の組織から切り離し、自立性を高めることが目的。アンケートでは、主に法人化後、4年間の変化について質問した。

「法人化により、国立大間の格差は広がったと思うか」という問いには、92%の77大学が「広がった」と回答。同じ国立大でも、東大、京大などの旧帝国大、理工系、教員養成系(教育)大学などの違いで、法人化当初から、「体力差」への懸念があった。室蘭工業大の松岡健一学長は「過去の資産のある大規模大に資金が集中している」と指摘。岩手大の藤井克己学長は「旧帝大は余裕があるため、新たな展開を可能にしている。格差拡大は『地力の差』にあると思う」との意見を寄せた。

法人化後の問題点では、73大学が「運営費交付金など国からの予算配分の仕組み」を挙げた。国立大の主要財源となる交付金は08年度予算で1兆1813億円。法人化した04年度より600億円余り減った。各大学とも毎年1%を目安に教育研究経費の効率化を求められ、交付金もそれに応じて減らされている。広島大の浅原利正学長は「一律削減により、もともと財政基盤の異なる旧帝大と地方大(特に教育系単科大)の格差が広がった」とした。

交付金の削減分は、外部の研究資金や寄付金などで補うことが期待されるが、鹿屋体育大の福永哲夫学長は「外部資金獲得は大規模有名大学あるいは医理工系分野に有利に働く」と指摘した。

教育そのものへの影響も出始めている。交付金削減で、37大学が「資金が足りなくなり、教育研究や学生サービスに悪影響が出た」と回答。愛知教育大学のように、「教職員の定年退職後不補充により、特に卒業研究指導など教育への悪影響(が出ている)」などの状況がみられる。一方で、旧帝大の7大学でこの回答を選んだところはなかった。

格差拡大や交付金の在り方について、文部科学省次官だった山形大の結城章夫学長は「大学の改革努力を前提に、交付金の削減をやめ、増大に転じること」、熊本大の崎元達郎学長は「高等教育の公財政投資を欧米並みに、現在の国内総生産(GDP)比0.5%から1%に増加させること」を提案している。(大西史晃、葉山梢)

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アンケートは、8月から9月にかけて郵送で実施。徳島大と上越教育大を除く84大学の回答を集計した。文中の数字は、84大学に対する割合を表す。