『秋田魁新報』社説 2008年11月5日付

大学・自治体連携 特色出し地域に役立て


全国の大学が生き残りを懸けて地域に根ざす運営に力点を置き、自治体など地域との連携を強めている。県内の各大学も、このところ連携協定を結ぶケースが相次いでいる。

秋田大はきょう5日、小坂町と包括協定を締結する。「環境との共生」を掲げる同大が、鉱山の町として培われてきた技術を生かして金属資源の再生にも取り組み、近代化遺産などによる活性化を目指す同町との連携を拡大し、より強固にする。成果を注目したい。

国立大学は2004年度に法人となり、運営の自由度はぐんと増したが、国の運営費交付金は年々削減され、どこも経営基盤の強化が喫緊の課題だ。交付金の配分には教育研究はもちろん、地域貢献活動の評価も反映されるという。だが経済・産業界からは研究面の成果主義導入を強く求める意見がある。

「大学全入時代」とされる。少子化の進展の中でも大学数は増えており、えり好みしなければ希望者は全員入学できる。大学は、選ばれる、存在感のある運営に躍起だ。学生納付金に多くを負う私立大も、生き残りへ危機感を募らせる。

そんな中、各大学とも基本理念や目標の柱などに掲げる「地域の振興」や「地域との共生」などを、目に見える形でアピールしようというのが、地元自治体などとの相次ぐ連携協定の締結である。だが、それは「地域に役立つ」大学へと脱皮するためのスタート台にすぎない。

秋田大の自治体との連携協定は昨年の県を手始めに、秋田市、大館市、小坂町と続き、能代市とも結ぶ計画だ。県立大は先月、八郎湖の再生や町おこしに取り組む潟上市と連携協定を締結した。国際教養大も昨年、八峰町と協定を結び、海外からの留学生が町の児童や園児の英語授業を手伝っている。

今春、観光学科を創設したノースアジア大は意欲的だ。既に県内の主要観光地を抱える小坂町、男鹿市、仙北市など7自治体と協定を結び、先月は五城目町観光協会とも締結した。学生が県内各地の観光現場で学べるのは魅力的である。

連携する自治体にとっては、それぞれの地域課題の解決に大学の知恵を借り、研究者のノウハウを生かし、人材供給面の恩恵にもあずかれる。連携する双方の思いが一致することで、大学が身近になり、その存在感は高まるはずだ。

心配なのは大学が連携の締結を急ぐあまり、取り組みの実効をおろそかにすることだ。形を整えるだけでなく、着実に成果を挙げるべきである。

各大学は、建学の精神を踏まえつつ、時代と地域が求めるものに応えられるように、大学の特色を前面に出すべきではないか。「大学全入時代」を迎え、魅力を付加していかなければ生き残れないからである。地域に頼りにされ、役立つ大学運営を望みたい。