『陸奥新報』2008年10月29日付

弘大大学院医学研究科が基礎研究生支援で新制度


研究者を一人でも多く育てたい―。弘前大学大学院医学研究科(佐藤敬研究科長)は、同研究科の「巻渕基金」を元に、来年度からの同研究科基礎系講座の入学生一人の入学金と3年分の授業料を全額支援する「大学院生支援制度」を新たに設ける。同研究科は「巻渕基金に感謝し、制度で大学院教育、研究のさらなる充実を果たしたい」としている。

巻渕基金は、弘大卒業生で医師の故巻渕秀夫氏の遺志と遺族の理解を得て2004年に創設。これまで一部が弘大生用のラウンジ新設費用に充てられている。

大学院生支援制度では、弘大医学研究科(博士課程)基礎系講座(全十講座)に所属する新入生(社会人を除く)を毎年一人選抜、収入のない大学院生が対象となる。対象者一人に対し、入学金28万2千円と授業料53万5800円を3年分支援する。

大学院進学者数は伸び悩みがたびたび指摘されており、原因として(1)大学医学部卒業者の初期臨床研修が04年度から義務化されたこと(2)大学院生の経済的な負担が大きいこと―などが挙げられている。

同研究科では支援制度が少なく、医師免許を持つ臨床系の大学院生のように、医師のアルバイトなどで学費や生活費を捻(ねん)出(しゅつ)することができない他学部出身者の基礎系大学院生は、経済的な問題で研究に専念できない人が多いというのが現状だ。

同制度は、特に大学院進学を希望する他学部出身者を後押しする制度として注目される。

同研究科学事委員長の若林孝一教授は「医学は臨床だけでは発展しない。研究に専念する環境を整えることは5年、10年後の医療の発展に結び付き、研究者のマンパワーの確保にもつながる」と制度に期待を寄せている。