『山陽新聞』社説2008年10月20日付

法科大学院 厳しい自己改革が必要だ


法科大学院の現状に不安を抱かせる結果が、また明らかになった。法科大学院の認証評価機関である日弁連法務研究財団は、二〇〇八年度の上期に認証評価した七校のうち三校について、設置基準などを一部満たしていないとして「不適合」と判定した。

法科大学院の認証評価機関は同財団など三つあり、各校は五年に一回、評価を受けることが義務づけられている。不適合とされると、文部科学相が対象校に報告を求め、必要な改善指導をする。

現在、法科大学院は七十四校あり、今回を含めて三十一校が評価を受け計八校が不適合となった。割合は約26%に上り、実に四校に一校が運営などに問題があったことになる。

法科大学院は〇四年以降、全国各地に創設された。時代とともに司法へのニーズが多様化する中、法曹人口を増やして法的な思考力だけでなく、幅広い教養や人間味を兼ね備えた質の高い法律家を育成するというのが設立理念になっている。

「身近で開かれた司法を目指す」という司法制度改革の一環だ。今回の評価では、学内での成績評価が甘かったり、バランスの悪いカリキュラムを組んでいたことなどが問題として指摘された。

こんな状況で期待される法曹養成機関としての役割が、きちんと果たせるのか。残念ながら懸念を覚えざるを得ない。

法科大学院については、厳しい自己改革が求められるような課題が相次いで表面化している。当初は修了者の70―80%が新司法試験に合格すると想定されたが、〇六―〇八年の合格率はそれぞれ48%、40%、33%と下がり続けている。

さらに定員割れや教員不足の法科大学院も少なくない。最高裁の報告書は、新司法試験の合格者が中心となった最近の司法修習生に関して「実力にばらつきがあり、下位層が増加している」と分析した。

法科大学院の質向上策を検討している中教審大学分科会の法科大学院特別委員会は先月、各校の自主的な定員削減や統廃合などを推奨するという中間報告をまとめた。文部科学省と法務省は、これを基に各校へのヒアリングを実施し、年内にも改善策を出すよう求めるという。

学校によって事情は異なるだろうが、まず定員規模に応じた質の高い教員を確保した上で、指導内容を充実していくことが不可欠である。志願者や社会の信頼を得るためにも、これまでの取り組みをしっかり検証し改革を進める必要があろう。