『読売新聞』2008年10月24日付

社会人向け大学専門講座
最新の看護技術など人気


再就職やキャリアアップに役立つ勉強をしたいという社会人を対象にした「履修証明プログラム」が今年度、スタートした。秋にも千葉大看護学部で始まるなど国立では14大学が導入。人気も上々のようだ。

学校教育法の改正により可能になった制度で、背景には、従来の公開講座などでは物足りなく、より高度な講座を求める社会人側の要望と、少子化時代に対応して新たな学生を集めたいという大学側の狙いがある。

履修できるのは、大学入学資格のある社会人。看護や農業など専門分野を選び、知識や技術を習得する。120時間以上の講義や演習、実験を義務づけ、修了者には証明書が交付される。

千葉大では看護学部に想定を超える受講希望者が集まった。元看護師ら64人の応募者の中から、書類審査で選ばれた23人が今月1日、最新の看護技術や知識を学び始めた。受講生は12月中旬までに計360時間、在宅ケアシステムやリハビリテーションに関する講習を受ける。病院などでの実習も予定。同大によると、受講者は出産などで離職中の人や結婚を機に看護師を辞めた人がほとんどという。

プログラムを統括している吉本照子教授(看護学)は「充実した講師陣や病院などとのネットワークがある大学だからこそ、体系的に学べるカリキュラムを組むことができる。修了生たちは、再就職すればきっと戦力になるはず」と自信を見せる。

各大学のプログラムは、おおむね数か月程度で修了。計14日間という短期のカリキュラムをつくった鹿児島大の林業生産専門技術者養成コースなどもあり、仕事を抱えた社会人でも、受講することができる。

社会人教育に詳しいNPO法人「産学連携推進機構」(東京都千代田区)の妹尾(せのお)堅一郎理事長は、「大学に通うことが不可能な社会人に新たな扉を開いた。専門的に学習することができるし、看護など人手不足の分野では人材確保にもつながる」とメリットを強調。「潜在的なニーズはもっとあるはずなので、大学側は多様な講座を開設して、社会人に学び直しの機会を提供してほしい」と呼びかけている。(渡辺光彦)