『読売新聞』広島版2008年10月22日付

工業高と大学 連携し成果…広島
情報通信技術で研究会発表も


広島市立広島工業高校は、広島市立大などと連携して情報通信技術の研究を行い、大学や企業の研究会で発表するなど成果を上げている。

「緊張したけれど、企業でも通用するレベルと言われびっくりした」。東京大で先月19日に行われた情報通信技術のシンポジウムで、自分たちで開発したマラソン大会の自動記録計測システムを発表した情報電子科3年の川浦貴文さんは充実した表情だった。

同高は2003年から、市立大、広島大と連携し、インターネットを中心とした情報通信技術の教育に取り組んでいる。きっかけは市立大から、ネット経由で家電を制御する機器を作ってほしいと依頼されたことだった。「我々はソフトウエアは専門だがハード作りは苦手。ものづくりが得意な工業高校に協力をお願いした。高校生と大学生が共同で作業することで互いに大きな刺激にもなった」と、同大の前田香織教授(49)は説明する。

当初は大学生に仕組みを習いながらだったが、生徒らは技術を次々と習得。ロボットの遠隔操作や市内各地に設置した気象観測装置のデータ回収と表示システムなど、内容は次第に高度になった。

06年度には、専門高校の特徴ある教育を支援する文部科学省の「目指せスペシャリスト」事業にも選ばれた。今年2月の校内マラソン大会に向け、無線タグを使ったタイムの自動計測システムに取り組み、ほぼ自力で開発した。大会では446人の参加者の99%の読み取りに成功した。

05年に製作した二酸化炭素濃度の計測装置の結果は、市役所などに自動配信されて表示され、市民の意識啓発に役立っている。

プログラミングなどの基礎は授業で習うが、製作や実験は放課後を利用して、自主的に取り組んでいる。「自分たちのアイデアが形になり、成果として出ることでやる気と自信が出る。好奇心や遊びが、最高の学びだと実感している」と、指導する谷口和久教諭(43)は話す。

シンポジウムに招待するなど活動を支援している東京大の江崎浩教授(45)は「高大連携でここまで成果を上げているのは珍しい。他の地域でも取り組みが広がるよう後押ししたい」と話している。(吉田典之)