『産経新聞』2008年10月17日付

近畿の14大学などがコンソーシアム設立へ 科学技術立国・日本を支える人材育成目的に


医学、工学の高度な知識・技術をもち、科学技術立国・日本を支える人材育成を目標に、大阪大学、関西大学など近畿地方の14の大学、研究・医療機関が、学部や学校の枠組みを超えた教育プログラムを提供する「臨床医工情報学コンソーシアム(連合体)関西」を、近く設立する。コンソーシアムでは手始めに、武庫川女子、関西、大阪電気通信など5大学が平成21年度に工・薬学部などの学部生を対象に始める共通講座を、支援する。

現在、生命科学や医療の分野では、コンピューターによるシミュレーションなど工学系、情報科学系の知識・技術が不可欠。科学技術分野での日本の国際競争力を高める観点からも、分野をまたがった幅広い知識をもつ研究者が求められている。コンソーシアム代表に就任する大阪大臨床医工学融合研究教育センターの倉智嘉久センター長は「先端分野で働く人材を育てる新しいシステムにしたい」と意気込みを語る。

コンソーシアムで行う共同教育の原点になったのは、大阪大が平成17年度から始めた「社会人再教育プログラム」。企業研究者や医師、大学院生を対象に、医療現場で必要とされる情報処理など工学系の知識や、反対に工学系研究者に求められる医学の知識を提供しており、毎年約500人が受講している。

今回、同プログラムで培ったノウハウを、5大学に提供。学部生という、より早い段階から職業に直結する異分野の知識・技能を提供し、プロの研究者、職業人育成を目指す。共通講座は座学だけでなく、実習や演習も多く含み、5大学はそれぞれ、単位認定する。

また、コンソーシアムでは、専門教育だけでなくすべての学問のバックボーンとなる「教養教育」や、女性人材の育成、高校など初等・中等教育機関との連携も視野に、活動の範囲を広げる。

倉智センター長は「高度な知識・技能をもった職業人育成は、日本という国にとっても重要な課題であり、異分野に触れることで、学生の感覚も変わる。近畿の大学が連携する基盤としてコンソーシアムを発展させ、すべての意欲ある若者に最高最先端の教育を提供したい」と話している。

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大学コンソーシアム 複数の大学が、情報交流や産学連携推進など共通の目的に向け設立する組織。全国大学コンソーシアム協議会には40組織が加盟。エリアごとに設置しているものがほとんどで、都道府県の枠を超えた大学コンソーシアムは少ない。