時事通信配信記事 2008年10月13日付

出身大学、さまざまに=ノーベル賞


日本人4人の受賞が決まった今年のノーベル賞。自然科学3賞では、2002年の小柴昌俊さん(物理学賞)、田中耕一さん(化学賞)のダブル受賞まで9人のうち、京都大、東京大出身者は7人を占めたが、今年は4人のうち3人が名古屋大と長崎大。有力候補に名前の挙がる研究者にも両大学以外の出身者が多く、「すそ野」が広がった形だ。

自然科学3賞の受賞者は、1949年の故湯川秀樹博士に始まり、87年の医学・生理学賞を受賞した利根川進さんまで、京大、東大出身者が独占。2000年に東工大出身の白川英樹さんが化学賞を受賞するまで続いた。

今年は、6年ぶりに日本人の受賞が決まったが、東大出身の南部陽一郎さん以外は、名大の小林誠さん、益川敏英さん、長崎大の下村脩さんと、各地の大学が快挙に沸いた。

さらに、「有力候補」として取り上げられる日本人研究者を見ると、「人工多能性幹(iPS)細胞」を開発した京都大教授の山中伸弥さんは神戸大出身。「カーボンナノチューブ」の飯島澄男さんは電通大。「光触媒」の藤嶋昭さんも横浜国大と、バラエティーに富む。

地方大学の「躍進」について問われた益川さんは「近年はインフォメーション(情報)の点ではどこにいても変わらない」と昔との違いを説明、「地方大学の不利な点は、研究者の層(の薄さ)にある」と課題を口にした。

ノーベル賞の歴史に詳しい東京大大学院の岡本拓司准教授(科学史)は「戦前には、東大、京大以外からも(選考当局への)推薦例はある。特色ある研究をする人は昔からいたのではないか」と指摘。「こつこつとやって新しい発見をするには、むしろ大きな組織よりもたどりやすい面もあるのかもしれない」と話している。

◆受賞年  賞 氏名    出身大学              
1949 物 湯川秀樹  京大理               
1965 物 朝永振一郎 京大理               
1973 物 江崎玲於奈 東大理               
1981 化 福井謙一  京大工               
1987 医 利根川進  京大理               
2000 化 白川英樹  東工大理              
2001 化 野依良治  京大工               
2002 物 小柴昌俊  東大理               
 同   化 田中耕一  東北大工              
2008 物 南部陽一郎 東大理               
 同     小林誠   名大理               
 同     益川敏英  名大理               
 同   化 下村脩   長崎大薬              
※物は物理学賞、化は化学賞、医は医学・生理学賞。08年は受賞決定者

※南部さんは米国籍