『産経新聞』主張2008年10月5日付

法科大学院 法曹の質向上へ再編急げ


中央教育審議会の特別委員会が法科大学院の定員削減や統廃合を促す中間報告をまとめた。レベルの低い大学院が淘汰(とうた)されるのは当然として、本来の設立趣旨を生かせる再編が急務だ。

法科大学院は、司法改革に伴い、弁護士や裁判官ら法曹の新しい人材養成機関として平成16年に開設された。法学部卒業生など既修者向けの2年コースと、社会人など法学未修者対象の3年コースがあり、修了者は新司法試験の受験資格が得られる。

新司法試験の合格率は当初7、8割程度と想定された。ところが修了1期生から想定を大幅に下回る結果となり、3回目の今年の合格率は約33%と前年実績をさらにおよそ7ポイント下回った。合格者ゼロの大学院も3校あり、修了者のレベルや法科大学院の教育の質自体への懸念が高まっている。

法科大学院は現在74校あり、定員は全体で約5800人となっている。当初は20校程度と予想されていたことを考えれば、「乱立」との批判もうなずける。

入学者の質の確保が難しくなっているほか、学部との兼務で専任教員が少ないなど教育体制の課題を多くの大学院が抱えている。

100人を超える大人数の授業や受験対策偏重の授業を行っているところもあり、大学評価機関から設置基準に合わないと指摘された法科大学院もある。受験知識偏重などと批判が強かった旧司法試験制度の反省から導入された意図からは隔たる状況だ。

法科大学院は年間100万〜200万円の学費がかかる。入学者には相当な負担だ。法曹のプロを養成するねらいに見合った教育が行われず、合格率が低迷するようなら、志願者は減り、入学者の質はさらに低下しかねない。

実際、74校のうち46校で定員を割り込んでいる。それでも定員削減の検討を進めている大学院はまだ一部にすぎない。

新制度では、法学部出身以外にも多様な人材を法科大学院で鍛え、法曹界を活性化させるねらいが込められていた。

だが、社会人ら未修者の合格率は低迷しており、期待通りの形にはなっていない。地域による弁護士の偏在解消も課題だ。中間報告が指摘するように、再編では大学院同士の「競争的な環境」をつくると同時に、夜間コースや奨学金拡充など幅広い人材養成に一層の工夫が求められるだろう。