『朝日新聞』2008年10月10日付

ノーベル賞に沸いているけど… 日本の論文数5位に転落


日本の最近10年間の科学系論文数の伸びは主要国中最低レベルで、 数では中国、英国、ドイツに抜かれて2位から5位に転落したことがわかった。論文数はその国の「科学技術力」を示す重要な指標。ノーベル賞4人受賞にわく日本だが、先行きは必ずしも安泰とはいえないようだ。

オランダの学術情報出版社「エルゼビア」がつくっている世界中の主要学術誌の約6割をカバーするデータベースから、スペインの科学情報調査会社「スキマゴ」が集計し、07年の上位20カ国について、97年と比較した。

それによると、日本の07年の論文数は9万185本で、米国、中国、英国、ドイツに次いで5位。97年からの伸び率はわずか5%で、 中国(505%)、韓国(204%)、ブラジル(159%)はもちろん、西欧諸国(22〜80%)、米国(10%)にも及ばず、下から2番目だった。

政府は「資源に乏しい日本の未来を切り拓(ひら)く途(みち)は、 独自の優れた科学技術を築くことにかかっている」として、科学技術基本計画を策定。96〜05年度の10年間で約41兆円の政府研究開発投資をつぎこみ、06年度からの5年間で約25兆円を投入する目標を掲げているが、米国(年額17兆円)や中国(同10兆円)よりはるかに少ない。(杉本潔)