『読売新聞』2008年10月5日付

重点観測火山を34から15に、財政難や人手不足で…文科省


全国の国立大学が重点観測する火山を、文部科学省が来年度から、従来の半分以下の15か所に絞り込む方針を決めた。

大学の財政難や人不足で、観測網の維持が難しく「選択と集中」が必要と判断した。対象から外れた火山では、監視の目が手薄になる可能性もある。

観測を強化するのは、桜島や伊豆大島など従来、噴火活動が活発な火山。強化する火山では順次、地震計や傾斜計を増設していく。大きな変化が見られない火山が対象から外れる。

全国34か所の火山を観測する国立大学は法人化後、老朽化した観測機器を財政難で更新できず、年に数千万円の維持費を確保するのがやっと。地味な観測では学問的な成果につながりにくく、研究者も減少した。文科省では、対象の火山を絞り込み、噴火予知など防災につながる研究に専念できるようにする。

対象外の火山の観測を文科省は気象庁に移譲したい考えだが、同庁は「機器をそのまま引き受けるのは困難」としている。移譲が進まないと、上がってくるマグマの位置など詳しい噴火活動をつかめなくなる恐れがある。

火山観測には噴火警戒と学術研究の両面があり、気象庁が監視する火山も34か所ある。うち25か所は大学と共同で機器観測している。