共同通信配信記事 2008年9月29日付

苦闘する教職員の悲鳴が聞こえる 「大学『法人化』以後」 中井浩一著


「こっちの方がよほどいいです」。某国立大学から移ってきた同僚が、言った。

私大教員にまで戦々恐々の目で見られる国立大の現状。いわゆる遠山プランで、国立大の統廃合・法人化、結果として数の削減がもくろまれ、文科省の試算でも「最悪…八七大学中四七大学がつぶれる」と言われる改革が進行中だ。

国立大はどうなっているのか。現状をじっくり取材し、「独立行政法人化」真っ盛りの大学改革の今を縦横にえぐったのが本書。再編・統合やむなしの声もある中、苦闘する教職員の悲鳴が聞こえる。

しかし、文科省主導の改革は、本当に大学また国民のためになるのか。教員不足、医師不足…が叫ばれるなか地域と携えその要望を吸い上げていくには、やはりパブリックセクターが必要。だからこそ間尺に合った産学連携し「知的財産」の組織的な管理運用を目ざす国立大の姿もある。

置かれた地域に根ざすのが大学の役割。それを知るからこそ苦闘する大学の「今」が見える。

(中公新書ラクレ 1000円+税)=安岡真・筆