『読売新聞』愛媛版2008年9月20日付

紙産業担い手大学院で育成
愛媛大に全国初 修士コース


愛媛大学は、全国屈指の紙産業集積地である四国の紙産業の担い手を養成する全国初の紙産業大学院修士コースを2010年4月に開設する。経済産業省の「産学連携人材育成事業」の採択を受け、地元の製紙企業や、松山、香川、高知の3大学などから講師を迎え、業界で中核的な人材となり得る若手育成を目指す。

平地の少ない四国では、江戸時代から紙の原料となるコウゾ、ミツマタの栽培が盛んで、和紙の産地として知られた。明治以降、瀬戸内を中心に近代的な製紙業が発展した。

2006年工業統計によると、四国にはパルプ製造業や伝統的和紙製造業など紙関係の435社があり、製造品出荷額は8402億円。そのうち、四国中央市は4810億円を占め、全国一の紙産業集積地となっている。

業界では、大量退職する団塊世代からの技術継承や海外需要に対応した新製品開発が可能な人材確保が課題で、同市や四国中央商工会議所は愛媛大に対し、紙産業に特化した教育課程の設置を要望。同大は、事業委託料として3年間で数千万円を受け取ることができる経産省の制度を活用し、大学院に専門コースを設けることにした。

新設するコースは、愛媛大が管理法人となり、四国中央商工会議所のほか、松山、香川、高知の各大学とで共同事業体を設立。企業や4大学の研究者から13人の講師を募る。

08、09年度中にカリキュラム策定や教材開発などを進め、10年度から年間6人の院生を募集する。1年目は紙産業原論や、紙産業技術史論などの座学を中心とし、2年目に企業や研究施設での現地実習を行って、即戦力となる人材を育てる。

愛媛大農学部の森賀盾雄客員教授は「紙産業の経営から技術論まで総合的な専門知識を学べる場は国内で初めて。紙産業の人材育成拠点を目指したい」としている。