『毎日新聞』2008年9月10日付夕刊

解説:法科大学院に危機感 教育能力に見合う改革必要−−毎日新聞アンケート


法科大学院の4割が総定員数(約5800人)削減の必要性を回答した毎日新聞のアンケートは、一定水準の合格率という「実績」を維持できない各大学院の危機感を浮かび上がらせた。だが、実際に定員を見直す法科大学院は一部にとどまる。法科大学院を巡っては「質」も問題視されており、教育能力に見合った改革が求められる。

法科大学院の総定員数は導入時「15〜20校で4000人程度」だった。背景には、司法試験合格者を年3000人に増やす政府の方針と、「合格率7〜8割」の目安があった。だが、「大学の法学部に優秀な学生を集めたい」とする経営戦略も絡んで74校に増え、「司法制度改革の理念と乖離(かいり)する」(改革に携わった自民党国会議員)との批判も出始めた。法務省幹部は「多くの大学院が質の低い学生しか送り出せない現実が問題だ」と指摘する。

また、法科大学院では学部との兼任教員が依然多く、修了認定も甘いなど養成機能が問題視されている。一方「外車1台分」とも言われる学費が優秀な学生を除外する要因となり、奨学金制度の充実を求める声も上がる。

優秀な法曹志望者を獲得する趣旨を考えれば、一定の定員維持は必要だ。だが、大量の司法試験不合格者を生み出している現状は、法科大学院が養成機関としての機能を十分に果たしておらず、多くの志望者を不幸にしていると言わざるを得ない。【石川淳一】