『朝日新聞』群馬版2008年8月26日

群馬大、残業代不払い


群馬大学(前橋市)が昨年6〜9月、職員約270人分の残業代計約2490万円分を支給しなかったとして、前橋労働基準監督署の是正勧告を受け、12月に一括して払ったことがわかった。群大に限らず、旧国立大学は04年、一斉に国立大学法人に改組し、職員は国家公務員でなくなった。各地の国立大学法人で残業代の不払いが発覚する背景には、労働基準法が適用されるようになったにもかかわらず、採算や経営が重視される中で、人件費の抑制にはしりがちな事情もある。

群大人事労務課によると、実際は計5万7223時間を数えた残業時間のうち、4万5535時間分しか支払っていなかった。11月に前橋労基署の勧告を受け、12月、約270人(うち病院職員101人)に対して、計1万1688時間分にあたる約2490万円の残業代を支払った。額は、多い人では数十万円にのぼった。

残業をする場合、職員は上司に「時間外勤務申請書」を出すことになっているが、法人化前から、申告してもその通りには支払われない状況が続いていたため、職員自身、短い時間を申告するようになっていたという。同課は「人件費の予算配分が抑制されてきた中で、各部局の管理職側も、1人あたりの残業代は最高でも年間360時間、月間45時間以内に抑えないといけないものだという認識を持っていた」と説明する。

勧告以降、文書や口頭で、各部署の管理職に対して「残業代を抑えたり削ったりしないように」と注意を喚起。あわせて、労働時間の管理についてのマニュアルも作った。

◆法人化で業務増加 交付金と職員は減

国立大学時代、職員は国家公務員で労働基準法が適用されなかった。人件費の抑制が問題視されにくかった法人化前の感覚を引きずったまま、労基署から残業代不払いを指摘される事例がここ数年、全国で相次いでいる。

法人化後も国は、国立大学法人に対して人件費や光熱費にあてる運営費交付金を出しているが、毎年1%ずつ(09年度以降は3%の方針)削減されるなど、先細りの傾向にある。一方で、法人化に伴い業務は増えて複雑になる半面、職員数は減っている。

こうしたなか、大学は財源の確保や、業務そのものの見直しや効率化を迫られている。競争が激化するなかでは、学生や病院の利用者に対するサービスの維持・向上も至上命令だ。

人事労務課の担当者は「これまで具体化しにくかった業務の見直しを、今回の労基署の勧告を機に徹底したい」と話す。財務課も「本当に残業が必要なのか検証してもらっている」。

事務棟では室温が32度を超えないと冷房を使わないなど光熱費を節約したり、業者に数百万円で依頼していたキャンパスの芝刈りを職員が行ったり。仕事の効率の低下や仕事の増加にもつながりかねないが、「これでかなり節約できている」という。