『北海道新聞』2008年8月16日付

原子炉専門家を育成 室工大大学院 2010年度に専門コース


【室蘭】室蘭工大(松岡健一学長)は十五日までに、原子力発電施設の製造、保全のスペシャリストを育成する、道内初の専門コースを二〇一〇年度に大学院に開設する方針を決めた。原発用部品で世界有数のシェアを持つ日本製鋼所室蘭製作所と提携し、即戦力の技術者を養成する。

低炭素エネルギーとして世界的に原発需要が高まる中で、原子炉などを手がける同製作所にも中国などから注文が相次いでいる。一方、相次ぐ原発事故などが影響し、国内で原子力を学ぶ大学生・大学院生は、ピークの一九九四年度の二千三百十二人から、〇五年度には七百三十五人に七割弱減少。政府も将来の人材不足を見越して専門家育成に乗り出している。

室工大大学院に開設するのは「エネルギー材料工学コース」(仮称)。

その準備として、今月から経済産業省の原子力人材育成プログラムの一環として、プレスクールを十二月まで開講する。当初の定員は七人で、室工大大学院生六人と日鋼室蘭製作所社員一人が参加。炉の腐食や破損の原因や予防法を講義と実験で学ぶほか、同製作所が製造する原子炉圧力容器を十分の一大で実際と同じ工程で製造し、溶接技術も習得する。

講師は同大建設システム工学科の岸徳光教授(衝撃工学)や同製作所の現場指導者ら。大学院ではプレスクールでの課程を発展させて講義内容を構成する考えで、修了生は原発メーカーや電力会社への就職が想定される。

道内では北大大学院に原発の運転・制御システムなどの講座があるが、室工大は製造過程に特化して、即戦力の技術者養成を目指す。

プレスクールのプロジェクトマネジャーを務める室工大の幸野豊教授は「現場で実技を学べる室蘭は国内でもまれな好環境」と専門コース開設の意義を語っている。