『毎日新聞』2008年8月17日付

科学技術政策:野田科学技術担当相に聞く 理数系でないからこそ、国民との橋渡し役に


各国が科学技術を中核とした新しい価値の創造(イノベーション)にしのぎを削っている。福田改造内閣で科学技術担当相、宇宙開発担当相に就任した野田聖子衆院議員(47)に、今後の科学技術政策の課題や抱負を聞いた。【西川拓】

−−就任の所感は。

科学技術は日本の魅力であったし、次の時代も魅力であり続けるだろう。大変チャレンジング(挑戦的)で、前向きな仕事だと、ありがたく思っている。

−−これまでの科学技術政策に欠けているものは。

10年前の郵政相就任時は与野党を問わず大勢の国会議員をあいさつに回ったが、今回は回る先が非常に少なかった。国会議員の応援団が少ないということは、国民の応援も少ないということ。今ある成果を享受できるのは、数年前にさかのぼる研究者の努力があるからだということを、国民に分かってもらう努力をしなければならない。理数系でない私だからこそ、その橋渡しをしていきたい。

−−山中伸弥・京都大教授のiPS細胞(人工多能性幹細胞)のような画期的な成果を数多く生むには、どういう施策が必要か。

iPS細胞は突発的に生まれた成果ではない。ちゃんと科学技術政策の担当者が目をつけていて「ハードルは高いが、きっと生かされる」と支援してきた。そういうチャレンジを国民に理解されるよう、PRしていくことが大事だ。失敗しても、なぜ失敗したかをきちんと公表して、研究者と国民が相互にいい関係を持ってもらいたい。

−−科学離れが懸念されているが、どうするか。

文系の私が、科学者・技術者に負けないくらい科学技術を愛するトレンドを作っていきたい。私は鉄腕アトムの世代。理数系の人たちがなぜ、その道に進んだのか、いろんなきっかけがあったと思う。それらを幅広く今の子どもたちに提供できるようにしたい。

−−理科には、どのような思い出があるか。

数学が苦手で、大学進学の選択肢に理数系はなかった。ただ、中学では化学部に入っていた。何の実験か覚えていないが、薬の調合を間違えたらしく、ビーカーが割れてしまったことがある。

−−宇宙基本法に基づく宇宙基本計画や宇宙戦略本部の体制を作るには、どのようなことに留意するか。

「ロケットが上がった」と喜んだり、宇宙飛行士の活躍に「ああ、すごい」で終わるのではなく、宇宙空間で行われたことが国民生活のプラスになるようなアイデアを出してほしい。

−−日本学術会議が代理出産を禁止する報告書を出したが、どう考えるか。

私も不妊治療を経験している。代理出産には肯定的だ。少子化の中にあって、新しい家族のあり方、親子関係を想像し始めてもいい。当たり前の出産もあるし、体外受精という方法もある。さらには子宮を失った方には、ボランタリー精神のある方の協力で母になる。その可能性を国が禁ずる理由はどこにもない。

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■人物略歴
◇のだ・せいこ

83年、上智大外国語学部卒。帝国ホテル勤務、岐阜県議を経て、93年の衆院選で初当選。98年7月〜99年10月、小渕内閣で郵政相を務めた。