『読売新聞』2008年8月13日付

育児に悩む女性研究者


「理想は2人」でも「両立困難」

結婚している女性研究者の44%に単身赴任の経験があり、65%は夫が同業者。理想の子供の数は2人だが、実現には悲観的――。理工系の学会で作る男女共同参画学協会連絡会による調査から、研究者のこんな家庭像が浮き彫りになった。

調査は昨年8月から11月まで、64学会を対象に実施。大学や企業で研究職、技術職として働く女性3761人、男性1万349人がアンケートに回答した。

男性は半数以上に子供がいたが、女性の65%は子供がおらず、1人が16%、2人が12%。

「子供は2人が理想」という答えが最も多かったが、その実現性については女性の61%が否定的で、理由として74%が「育児とキャリア形成の両立」を挙げた。

実際、未就学児がいる女性は、育児などに割く時間が多いため、子供のいない女性に比べ、在職場時間が週平均12・3時間短かった。

未就学児のいる女性の育児休業を調べたところ、企業で働く場合は67%が希望通りに取得できた一方、大学では46%が取得せず、26%が取得したが希望通りではなかった。その理由は「仕事を中断したくなかった」「希望通りになる職場環境ではなかった」「任期付きなので、育児休業分の任期延長が認められなかった」の順で多かった。

調査では大学などで任期付きで働く博士研究員(ポスドク)の生活実態も分析。回答した1369人のポスドクの平均年収は30〜34歳の男性で417万円、女性で378万円。企業の研究者との差は年齢とともに広がり、35〜39歳の男性では214万円少なかった。ポスドクの43%は契約上の勤務時間が週40時間未満だが、実際に職場で働いている平均時間は男性が60時間、女性が55時間と長かった。

同連絡会の大坪久子・東京大学講師(日本分子生物学会)は、「30代の若い研究者たちは、出産・育児の時期でもあるが、研究との両立に悩み、将来にも不安を抱いている。特に、女性研究者や、大学などで働くポスドクたちへの支援が不十分」と分析。育児中の研究者を支援する大学・研究機関のモデル事業や、若手の研究者を経済的に支援する日本学術振興会の特別研究員制度の拡充を求めている。(滝田恭子)