『読売新聞』社説2008年8月4日付

私大定員割れ 合併・再編も視野に入れよ


こんなに多くの大学が必要なのか。そう思わせるような結果である。

日本私立学校振興・共済事業団が発表した今年度の私立大学入学者の動向で、全国の私大の47%が定員割れを起こしたことが判明した。

募集停止などを除く565校のうち266校にも上る。定員の50%未満だった私大も29校ある。

延べ受験者数はわずかながら増えている。大手私大を中心に、1回の入試で複数の学部を受験できる制度や地方会場での入試を増やしたためだ。定員3000人以上の大規模校は全体の4%しかないが、受験者数の半分を集めた。

人気が集中する都市部の大規模校と地方の小規模校の「二極化」が、一段と鮮明になった。

国公立大志向が強まっていることもあろう。しかし、大きな要因は少子化にもかかわらず、規制緩和で大学設置基準が弾力化され、大学が増えている点にある。

18歳人口は10年前の約160万人より40万人近く減ったのに、大学は国公立も含め約600校だったのが750校以上になった。多様な大学、学部が登場する一方、「大学」の名に値するのか疑わしいところもある。

規制緩和は、新しい大学の参入によって競争を促し、教育の質を高めるのが狙いだったはずだ。だが、AO(アドミッション・オフィス)入試などで安易な入学者確保に走るところも少なくない。

中央教育審議会は7月にまとめた答申案で、「社会の負託に応えられない大学は、淘汰(とうた)を避けられない」との認識を示した。

設置を認めるかどうか審査する大学設置・学校法人審議会は、事前チェックを厳格化すべきだ。文部科学省も、私大の破綻(はたん)に備え、学生の受け皿など処理策を練っておく必要がある。

私大は学部ごとの定員割れの割合に応じて私学補助金を減額され、定員の50%以下ならゼロになる。定員を満たせないと、経営は一層苦しくなる。

破綻すれば影響を受けるのは在学生だ。私学には建学理念や経営方針があるが、早めに思い切った対策を打ち出さねばならない。

人気の低い学部は廃止し、特色のある学部に特化する。地域が求める人材の育成・輩出に絞った学部などに改組する。こうした措置が考えられよう。

国立大学は法人化を前に再編が進み、私大でも一部に合併の動きが見られる。合併・再編も一つの手だ。破綻に追い込まれる前に、大胆な経営判断が必要である。