『沖縄タイムス』2008年7月31日付

新法づくり困難か/大学院大の「特別法人化」


沖縄科学技術研究基盤整備機構(OIST)は三十日の第六回運営委員会で、二〇一二年開学予定の沖縄科学技術大学院大学の将来構想をまとめた。国の財政支援を受けつつ、私学のような自主性を兼ねた「特別な学校法人」という運営形態が示され、「懸案だった制度設計が決まり、教育・研究、施設建設とともに出発点に立った」(内閣府)。しかし「世界最高水準」という目標までには、新法制定など「前例のない課題」(岸田文雄沖縄相)が待ち構えている。

国内で「特別な学校法人」として運営されている例として放送大学がある。政府が全額出資する特殊法人だったが、〇二年に改正放送大学学園法がつくられ、新組織となった。しかし今回は「全く何もないところから大学の法制度に組み込むという試み」(政府関係者)で、新法づくりには困難も予想される。

運営委は、世界から優秀な研究者を引きつけるために必要な柔軟性と自由度を担保するために新法制定を要望。同時に、研究に打ち込める環境整備を図るため国の財政支援も求めた。

内閣府は「激しい世界との競争に太刀打ちするには、優れた研究者が余計な心配をせずに優れた講座をすることが大切」と財政面での後押しを約束する。一方で「永遠に国が支援することも考えていない。国際的な評価を得たら、企業からの寄付や共同研究など自力で資金を稼げるようになる」と、あくまで軌道に乗るまでの措置だと強調する。

さらに「石ころに水をやるわけにはいかない。いつかは種になってくれないと」(政府関係者)とくぎを刺すように、研究成果の評価も重視、五年ごとに将来性を判断していくという。

開学までの手続きにも時間的な余裕はない。法人設立準備や大学設置審査などに二―二年半はかかる見通しで、新法の法案は遅くとも来年の通常国会に提出しないと間に合わない。

計画では今年六月末で十九人いる主任研究者を開学までに五十人に増やし、長期的に三百人を目指す。トーステン・ビーゼル共同議長は米・ボストンを例に「良い大学の周辺に新産業が誕生し、雇用も生まれている。ぜひ沖縄で実現したい」と語るが、実現までに乗り越えるべき課題は多い。(東京支社・西江昭吾)