『読売新聞』2008年7月26日付

国の機関と出資法人、談合損害125億円を回収できず


府省庁など国の機関や国の出資を受けた国立大学法人などが昨年11月までの約5年半の間に結んだ民間企業との工事などの契約で、談合による損害が340億円を超え、そのうち125億円を回収できていないことが25日、会計検査院の調べでわかった。

契約に「違約金条項」を盛り込んでいなかったため、契約相手方が請求に応じないことが主な理由だ。検査院は「税金を使う各機関は積極的に条項を盛り込むべきだ」と指摘している。

調査対象は、39の国の機関と、独立行政法人や国立大学法人など国が2分の1以上を出資する207の法人。2002年4月から07年11月の間、工事、設計、物品購入、役務に関して結んだ契約で、談合発覚後に違約金を請求できる条項の有無と、損害の回復状況を調べた。

その結果、外務省、経済産業省、参議院など10機関と、造幣局や商工組合中央金庫など28法人が条項を盛り込んでいなかった。法務省や環境省など19機関や日本中央競馬会や大阪大学など70法人でも、契約の一部に条項がなかった。

調査対象期間中に発覚した談合事件は、官公庁などが発注した航空写真測量業務の発注を巡る談合など23事件。これらの契約に関して、違約金条項がない発注者が請求した損害総額は計111億円であるのに対し、回収できたのはわずか6億円。一方、条項を盛り込んでいた発注者は損害金232億円のうち212億円を回収でき、条項の有無が、損害回収の明暗を分けた。

1990年代後半から、談合による損害金は、自治体住民が落札業者に対して住民訴訟を起こして返還を求めていた。しかし、訴訟では返還までに時間がかかるなどの理由で、国土交通省が2003年、他省庁に先駆けて違約金制度を導入。これが「標準モデル」となり、全国の公的機関や民間企業が導入を進めていた。