『読売新聞』2008年7月25日付

大学売り出す「研究成果」


研究で得られた成果を商品化して積極的に売り出そうという活動が国内の大学で盛んになっている。“大学ブランド”の商品を広報媒体として活用しながら、研究そのものをPRする狙いもある。

国立大学協会によると、全国の国立大が、研究を生かした商品開発や販売に積極的に取り組むようになったのは2004年4月の大学法人化以降。同協会が今年2月の時点でまとめたところ、55の国立大で商品の販売を始めたり、製品化に成功したりしていた。

この中には“大学ブランド”として認知されつつある商品もある。

筑波大の山海(さんかい)嘉之教授が1990年代から基礎研究していたロボットスーツ「HAL」は、腕や脚に装着し、人間の意思に従って体の動きを補助する器具で、高齢化社会が進む中、福祉施設などから問い合わせが増え始めた。そこで山海教授は04年6月、自らが社長となってベンチャー企業「サイバーダイン」(茨城県つくば市)を設立。今年4月からは、つくば市内に研究開発センターの建設を始め、10月からは段階的に年400〜500台を生産できるようになる。

小学館の情報誌「DIME」も06年4月〜07年12月にかけ、国公私立37大学の農学系39の研究室から誕生した商品を紹介した。

その一つ、佐賀大の野瀬昭博教授が砂漠化防止用に研究している南アフリカ原産の植物「アイスプラント」は、食用野菜「バラフ」として同誌に掲載されて注目を集め、関東や関西のデパートで販売されるようになった。野瀬教授は「野菜が売れれば、多くの学生が私の研究にも関心を持ってくれるはず」と期待を寄せる。

DIMEで、この特集を企画した松元浩一・前編集長は「少子化の中、優秀な学生を集めるには研究成果のPRが必要な時代になっている」と話している。(渡辺光彦)