『読売新聞』2008年7月18日付

iPS再生医療…京大が広報体制を強化
過剰期待や誤解解消


「新型万能細胞(iPS細胞)を使った再生医療はずいぶん先」――京都大は山中伸弥教授が世界に先駆けて開発したiPS細胞の研究について、患者らの過剰な期待や誤解を解消するため、専属の広報スタッフを配置することを決めた。

昨年11月、人のiPS細胞作製成功の発表以来、患者や家族からの問い合わせが山中教授のもとに数百件寄せられている。iPS細胞を利用した再生医療がすぐにでも受けられると誤解している人も少なくない。だが、iPS細胞は研究途上で、安全性などの観点から、医療応用の見通しは立っていない。

京大では「国費を使った研究で、社会への説明責任がある」として、iPS細胞研究の広報戦略を練るスタッフを全国から1人公募。今年10月以降、広報誌を年4回作製したり、患者向けのシンポジウムを定期的に開いたりして、研究成果を正しく普及させる。

2004年の国立大法人化以降、広報機能を強化する国立大が増えているが、特定の研究分野に限った体制整備は極めて珍しい。