『朝日新聞』2008年7月8日付夕刊

志願倍率に目標値設定 一部の国立大、学部予算に反映


一部の国立大学が学部ごとに志願者数などの目標値を設定し、その達成状況に応じて、各学部に配分する予算を増減させていることがわかった。「アメとムチ」で各学部の努力を促し、優秀な学生と、受験生が納める検定料収入の確保を狙う。少子化や法人化で厳しい競争にさらされる国立大に、受験生側の事情に左右されやすい志願倍率まで一定の「結果」が求められるようになった。

新潟大は年度当初に、次年度入試での志願者数の目標値を各学部に通知する。目標値は、過去3年の平均値から算定。目標を上回った学部には検定料と同額の1人当たり1万7千円を、上回った人数分追加配分し、下回った学部からは人数分没収する。

法人化の翌年の05年度予算から導入。少子化で「全入時代」が叫ばれる中、志願者数を増やすことで「質の高い学生の確保を目指した」(財務企画課)。国立大への運営費交付金が減らされる中、新潟大も経営努力を求められており、検定料で自己収入を確保する狙いもある。

だが、少子化などの影響で地方の大学の志願者数は伸び悩み気味。新潟大も08年度入試では、9学部のうち人文など2学部以外は目標に達せず、残り7学部で計約900万円が没収されることになった。

同大は、努力の成果に応じて差をつけるインセンティブ経費のうち、1千万円を各学部の志願倍率に応じて配分する仕組みも導入。国立大の同じ学部の平均値(前年度分)を上回った学部に1千万円を均等配分するようにし、07年度入試では3学部が対象となった。

香川大は06年度から、学生数に応じて配分する教育経費の5%(07年度は約1300万円)をいったん留保するようにした。学部の志願倍率か卒業生の進路確定率が目標に達すれば2.5%、定員充足率が90%以上になれば残り2.5%を再配分する仕組み。基準に達しない学部は没収される。

志願倍率の目標値は、過去4年間の平均値から算定。07年度入試では経済、農両学部、医学部看護学科が下回ったが、進路確定率が目標値に達したため、実際に没収したケースはないという。

06年度は4.4倍だった香川大全体の志願倍率は翌年度には4倍に。阿部文雄・副学長は志願倍率の目標設定を「意欲と能力のある学生の確保が目的」と話す。留保額を設けることで、教員にオープンキャンパスなどに協力してもらえる環境づくりも目指している。一方、堀江克則事務局長は「結果として収入増につながればありがたい」。

国立大学財務・経営センターの山本清教授は「学部の人気は変わりやすく、数年間の結果を見て判断するべきではないか。入試科目を減らして集めるようなやり方につながらないよう注意する必要がある」と指摘する。(大西史晃)