『京都新聞』2008年7月5日付

特任助教ポスト創設へ
京大理学研、博士号取得者を支援


最高学位である博士号を取得しながらも安定した職に就けていない多くの研究者を支援しようと、京都大(京都市左京区)の理学研究科は、任期終了後の教員への採用を想定した助教ポストの創設を目指している。

同研究科の過去10年博士号取得者を対象にした調査では、約3人に1人が任期付きの不安定な立場で研究を続けており、「将来に希望が持てないため、若手研究者を覆っている閉塞(へいそく)した状況を打破したい」としている。

創設を目指しているのは、3年から5年の任期の後、研究成果に応じて、任期のない助教など安定した職への登用が約束される特任助教ポスト約20人分。同研究科では、約20年前には140人いた助教が大学の教員削減の方針の下、現在は80人まで減っており、「理学研究科の教育や研究を維持するためにも、ポスト創設は欠かせない」という。

理学研究科が過去10年に博士号を取得した約1329人を対象にした調査では、33%が国内外で任期付きの研究員を続けている。一方、准教授や助教など任期のない大学教員は28%にとどまった。任期付きの研究員の多くは、数年の任期が切れるごとに職を転々とする状態だという。

加藤重樹・理学研究科長は「博士号取得者の安定した職の不足は限界に達している。高校など大学以外の教員にも採用されるよう、教育委員会への働きかけも強めたい」としている。