『読売新聞』山形版2008年7月3日付

山大、欧州研究機関と協定
スイスのCERN


山形大は1日、スイス・ジュネーブの欧州合同原子核研究機関(CERN)と共同研究の協定を締結したと発表した。学生派遣などを通して世界的機関のノウハウを吸収し、医療や交通など幅広い分野での活用が期待される素粒子の自転について、最先端の研究を進める狙いだ。

CERNは1954年設立の世界最大規模の素粒子物理学研究機関。ノーベル賞研究者を輩出し、巨大粒子加速器LHCを建設したことで知られる。日本はCERNでドイツやフランスなど11か国と共同で、陽子や中性子のスピン(自転)など素粒子の詳細な構造を研究しており、98年から参加している山形大理学部の岩田高広教授(48)が日本グループの中核だったため、共同研究の協定が結ばれた。岩田教授らがジュネーブを訪れ、6月20日に協定書を交わした。

スピンの性質を利用し、医療分野ではMRI(核磁気共鳴映像法)が開発されたり、交通分野ではスピンで生じる超伝導による「磁気浮上式電車」が研究されたりと、素粒子研究は幅広い分野に可能性を秘めているという。9月にはCERNの研究者を招く講演会も予定。山形大の教員2人がすでにCERNに常勤しており、今後は星の爆発などで発生する宇宙線の共同研究などにも力を入れる。

岩田教授は「最先端の研究を長期的に学べることは大きい。新たな分野への研究にもつながる」と期待する。