『中日新聞』2008年7月2日付

地域産業、名誉教授が先導 名古屋の研究所が全国初の活動拠点


◆資金得て研究に没頭

研究者として現役引退した理工系の名誉教授の知識や人脈を活用し、東海地区の最先端のモノづくりを引っ張ってもらおうと、産学連携の研究を進める名古屋産業科学研究所(名古屋市中区)が、全国初となる名誉教授のための活動拠点をつくった。

名誉教授の再登板の舞台は、同研究所が一部署として4月に設立した「研究部」。現在、名古屋大工学部を中心に名古屋工業大、三重大、岐阜大などの名誉教授約20人が研究員として登録する。

これまで国公立大の名誉教授は「大学退職イコール現役引退」。私立大の教授などに再就職するものの、研究施設は与えられず講義に専念するケースが多かった。研究活動を望んでも、名誉教授の称号だけでは研究費も申請できなかった。

しかし名古屋産業科学研究所の研究員になれば、文部科学省や経済産業省に研究資金を申請できる。さらに現役世代が国立大法人化以降、研究予算を獲得するため学会受けする研究に力を入れる傾向にあるため、逆に名誉教授は基礎的な研究に狙いを定めて資金を得て、研究に没頭することもできる。

研究員の毛利佳年雄さん(67)=名大名誉教授=は、既に文科省などから4件の研究費を取った。中高年ドライバーの運転能力測定・訓練シミュレーター開発など企業、行政と連携した試みもある。1億2000万円の研究費も申請中だ。「名誉教授の自由な立場から、大学や企業に面白い共同研究を持ち掛けることもできる」と語る。

同じく名大名誉教授の服部忠さん(67)は「教授時代は学会や学生指導に追われ、再就職の私大では研究費申請も難しかった。ようやく人工知能を使った触媒の研究ができる。名誉教授が日本の科学技術発展の支えになる」と意欲を燃やす。

【名古屋産業科学研究所】 産業にかかわる学術研究などを目的に1943(昭和18)年設立された財団法人。自主研究のほか産学官連携事業の推進、特許の管理などを事業としている。企業や国の寄付金、助成金、特許の管理費などで運営。