『毎日新聞』岩手版2008年6月11日付

岩手大大学院工学研究科:金型・鋳造専攻が人気 県外企業の社員入学も


◇人材育成や産学パイプ作りで

岩手大大学院工学研究科の金型・鋳造工学専攻が県外企業から注目されている。日本初の専攻ということで、修了生の争奪戦が激しいだけでなく、自社の社員を入学させる企業もある。背景には学問的な面での人材育成や同大とのパイプ作り、引く手あまたの修了生を獲得したいといった狙いがあるようだ。【安田光高】

北上市の金型技術研究センターで今月3日、金型の分解実習があった。8人の修士1年生に交じって、横浜市の製造会社に勤務する石坂則夫さん(31)が参加していた。入社9年目の中堅社員で、金型の設計を担当。会社ではこれまでの経験で設計していたため、理論を学ぼうと同専攻に入学したという。「会社として金型の技術力がないと勝ち残れない」と話す。

石坂さんのように同専攻には毎年、首都圏などの企業から社会人が集まる。

金型・鋳造専攻は06年4月に日本で初めて設置。日本のものづくりを支える人材育成と、地域の地場産業と連携し、世界に通用するものづくりの拠点を目指している。定員は10人程度だが、社会人も受け入れており、1、2年生の24人中9人が社会人。そのうち5人が県外企業で金型や鋳造を扱っている。

金型コースの岩渕明教授によると、県外企業の多くが業界大手ではなく、中堅企業。少ない修了生を他企業と競争して獲得するより、自社の社員を同大で2年間勉強させ、高度な技術を身につけさせた方が人材確保の面でも効率的なためだ。「大学とのパイプを築く」(石坂さん)という目的もあるという。

岩渕教授は「県外から多くの社会人が来るとは思わなかった。社会人以外の修了生も多くの企業から誘われ、就職できた。この2年間は一定の成果が出せたのでは」と話している。